うつ病と診断された方の転職活動には、さまざまな不安や困難が伴います。しかし、実は利用できる就職支援制度は数多く存在し、適切なサポートを受けることで、自分のペースに合わせた転職活動が可能です。
本記事では、うつ病の方が利用できる5つの就職支援制度について、それぞれの支援内容や申請方法、メリット・デメリットを詳しく解説します。
また、実際の利用者の声も交えながら、自分に合った支援制度の選び方についてもあわせて解説するので、うつ病と向き合いながら、新しい一歩を踏み出すためのヒントを見つけていただければ幸いです。
うつ病の人が転職時に利用できる5つの就職支援サービス

うつ病の方が転職を考えたとき、一人で求人情報を見ながら応募をするのは大変です。そこで、うつ病を含めたメンタルヘルスに疾病を抱えている方が転職するときに、利用できる5つの就職支援サービスを紹介します。
大前提として医師の診察を受けること
どのサービスを利用する場合でも、医師の診断が必要になります。そのため、まずはメンタルクリニックや精神科で診察を受けて診断書を出して貰いましょう。
また、診察時に転職を考えていることや、そのために制度を利用するので診断書が必要なことを相談するのがおすすめです。
のちのち、障害者手帳を取得して障害者雇用枠での転職を目指す場合、ある程度の機関の受診が必要になることもあるため、担当医とはしっかりと今後の予定をすり合わせる必要もあります。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のことです。ここでは、窓口や施設に設置してある検索機を利用して、全国の求人情報を調べることが可能です。
ハローワークでは求職者支援訓練や公共職業訓練を提供しており、雇用保険の受給資格の有無に応じて適した支援が行われています。また、専門の就職支援部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置されています。
特に障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っており、一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれます。
さらに、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えています。
背景には障害者雇用の支援の強化があり、法定雇用率の引き上げや雇用継続を図るための支援が整備されることで、障害者が就労しやすい環境が整えられています。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所以上設置されています。
このセンターでは、直接就職先を紹介するという支援は行いませんが、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
また、精神障害者総合雇用支援やリワーク支援なども行っています。
障害者職業カウンセラー、相談支援専門員、ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。特に、精神障害を含む障害を持つ方々に対する支援も充実しており、職場適応援助や職場定着支援などが提供されています。
うつ病を含む精神障害を持つ方々にとって、地域障害者職業センターは就職活動や職場適応に役立つ支援を提供しています。専門家による個別の相談や支援を受けることで、就労意欲を高め、安心して働ける環境を整えることができます。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービスです。このサービスは「障害者総合支援法」に基づき、通所型の障害福祉サービスとして運営されています。
利用者は、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得し、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探すことができます。
また、就労移行支援事業所では、医療機関との連携も行われ、利用者の健康状態やメンタルヘルスを考慮した支援計画が提供されることがあります。
全国に多数の事業所があり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります[5]。就職後の定着支援も行ってくれる事業所もあり、安心して利用できるでしょう。
特にうつ病の方にとっては医療機関との連携が重要であることを踏まえ、再発予防や就職後のフォローも提供されます。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、「なかぽつ」や「就ぽつ」と呼ばれることもあります。
現在、全国に337箇所(2024年4月1日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページから近くのセンターを探すことが可能です。
このセンターでは、障害をお持ちの方への就職支援や助言を行うほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施しています。
また、生活面での支援も提供しており、健康管理や金銭管理に関する助言を行うこともあります。
センターによって特徴が異なるため、利用するセンターについては事前に確認が必要です。
引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省
障害者向け転職エージェント
障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ公的な支援と併せて利用してください。
専任のキャリアアドバイザーが、あなたの状況に寄り添いながら、一緒に理想の仕事を探してくれます。うつ病への深い理解があるため、働く上での不安や心配事も安心して相談できます。
また、一般の求人サイトには掲載されていない、障害者雇用に積極的な企業の非公開求人も多数保有しています。そのため、より自分に合った職場環境や働き方を見つけやすいのが特徴です。
さらに、履歴書の書き方や面接対策といった就活準備から、入社後の職場での過ごし方まで、きめ細かなサポートを受けることができます。
「どんな仕事が自分に合っているのかわからない」「面接で自分のことをうまく伝えられるか不安」といった悩みも、プロのアドバイザーが一つひとつ丁寧にフォローしてくれます。
求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれ、就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。
うつ病に理解がある職場に確実に就職するなら公的機関と転職エージェントの併用

公的機関による就労支援を受けながら転職エージェントも利用することで、より確実に理想の職場を見つけられる可能性が高まります。特に、うつ病の方の就職活動では、複数の支援者からのサポートを得られることが大きな強みとなるでしょう。
転職エージェントでは、キャリアアドバイザーがあなたの状況や希望を丁寧にヒアリングし、その情報をもとに最適な求人を提案してくれます。
一方、公的機関では制度面でのアドバイスや、助成金などの情報を得られます。両者のサポートを組み合わせることで、より手厚い支援を受けることができます。
実際の就職活動においても、面接対策や履歴書作成で複数の視点からアドバイスを得られるのは心強いものです。
公的機関からは基本的なポイントを、エージェントからは応募企業に特化したアドバイスを受けられます。そのため、書類選考や面接でより効果的に自己アピールができるようになります。
さらに、転職エージェントは企業の社風や職場環境について詳しい情報を持っています。公的機関で紹介された求人についても、エージェントに相談することで、その企業の障害者雇用に対する考え方や実際の受け入れ体制について、より具体的な情報を得られることがあります。
このように、両方のサービスを活用することで、より確実に自分に合った職場を見つけることができます。一つの支援機関だけでなく、複数の支援を上手に組み合わせることが、スムーズな就職活動のポイントといえるでしょう。
「どのタイミングで病気のことを伝えるべきか」「職場でどんな配慮が必要か」など、うつ病ならではの繊細な相談もできるので、「この企業なら、うつ病があっても安心して働ける」と安心して自分らしく働ける職場を、より短期間で見つけやすくなります。
うつ病の人の経済的不安を解消する支援制度

転職活動を進める中で起きやすい問題として、経済的不安から企業の体質や業務の内容、障害者の受け入れ態勢をよく吟味せずに転職し、再びうつになってしまうケースがあります。
そうならないためにも、落ち着いて転職活動をするために休職中に利用できる経済支援制度を紹介します。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、精神通院医療や更生医療、育成医療を対象とし、医療費の自己負担を1割に軽減します。ただし利用者は指定された医療機関でしか利用できません。
メリット
- 医療費の自己負担が通常の3割から1割に軽減されます。
- 就労支援施設への通所のための受給者証を発行し、支援します。
- 経済的な負担が軽減され、日常生活や社会生活での自立が促進されます。
デメリット
- 自立支援医療は指定された医療機関でのみ利用可能です。
- 転院や手続きが必要な場合があり、非常に煩雑なので、うつ症状が重い時に一人で行うのは困難です。
- 一定以上の所得がある場合、公費負担の対象外となることがあります。
傷病手当金
傷病手当金は、健康保険に加入する被保険者が病気やケガで働けなくなり、事業主から十分な報酬を受け取れない場合に支給される手当です。
支給条件としては、仕事に就くことができない状態で、連続して3日間を含む4日以上仕事に就けなかった場合に適用されます。支給額は、過去12ヶ月の平均給与の3分の2程度です。
メリット
- 病気やケガで収入が減少する場合に、一定の生活保障が提供されるので、経済的不安が軽減されます。
- 最長1年6ヶ月まで支給され、支給期間中に一時的に就労した場合でも通算で支給されます。
- 退職後も一定の条件を満たせば受給が可能です。
デメリット
- 支給開始には3日間の待期期間が必要です。
- 申請書や証明書の準備が必要で、手続きが複雑です。
- 自営業者や任意継続被保険者は対象外であり、業務上の事由による病気やケガは労災保険の対象になります。
雇用保険(失業保険、失業手当)
雇用保険は、失業した労働者が安定した生活を送りつつ、早く再就職できるように支援する制度です。失業保険や失業手当などの通称でも呼ばれています。
基本手当は、失業した労働者に離職前賃金の50%から80%を支給します。受給資格は、離職前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要です。
メリット
- 失業時に一定の収入を保証してくれるので、生活が安定します。
- 求職活動を支援し、早期再就職を促進します。
- 最長330日の給付日数があり、早期再就職した場合でも特定の条件下で支給されます。
デメリット
- 離職前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要で、短期間の雇用者は対象外となることがあります。
- 求職者認定や支給申請が必要で、手続きが複雑です。
- 給付日数が限られており、支給期間を過ぎると残日数に関わらず支給されません。
労災保険
労災保険は、業務上の事由や通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡に対して保険給付を行い、被災労働者の社会復帰を促進します。主な給付には、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付などがあります。
メリット
- 業務上の事由や通勤による災害に対して迅速かつ公正な給付を行います。
- 被災労働者の社会復帰を促進するための事業も行っています。
- 労災保険給付が行われることで、事業主の災害補償責任が免除されます。
デメリット
- 業務外の事由による傷病は労災保険の対象外になります。
- 申請や手続きが必要で、煩雑です。特にうつ病の場合、労災認定を受けるまでに会社と争うケースがあります。
- 保険料は事業主が負担するため、事業主にとって経済的負担となるので、労災認定を拒否する事業主と揉めることがあります。
障害年金
障害年金は、国民年金や厚生年金に加入している間に病気やけがで生活や仕事が制限されるようになった場合に支給されます。
主に「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、障害の程度によって年金額が決まります。障害等級は1級から3級まであり、1級と2級はより重度の障害に対して支給されます。
メリット
- 病気やけがで働けなくなった場合に、一定の所得が保障されます。
- 現役世代の方も受け取ることができ、早期の所得保障が可能です。
- 障害の程度に応じた年金額が支給されるので、生活が安定します。
デメリット
- 障害認定や保険料納付要件が必要で、手続きが複雑で時間がかかります。
- 障害等級が軽い場合、年金額が少なくなることがあります。
- 申請書や証明書の準備が必要で、手続きには医療機関の協力が必要です。
うつ病の方が転職活動をするときの準備・ポイント

ここまでで見てきたように、うつ病の方の再就職は、一般枠で病気を開示して働くと不利になりやすいです。しかし、再就職を諦めなければならないというわけではありません。
では、うつ病の方が再就職に向けて転職活動をする際はどうすればいいのでしょうか。3つの点に分けて解説します。
1. 病気としっかり向き合う
病気のことを恥じる・隠すのではなく、しっかり向き合い、自分のうつ病の状態をきちんと理解することは非常に重要です。仕事をするにあたっても、自分で自分のことが理解できていないと、困ったときなどに周りにうまく伝えづらいという面があります。
2. 寛解するまで治療を続ける
医師から「寛解」(症状が安定して落ち着いた状態)の診断を受けられるまで、きちんと治療することも大切です。継続的な安定状態が見られないと寛解にはならないため、ある程度時間がかかることは理解しておきましょう。
また、寛解は「完治」ではないため、再発するリスクもあります。寛解したからと油断せず、再発しないように努めることも大事です。
引用元
寛解(かんかい) – 「病院の言葉」を分かりやすくする提案|国立国語研究所
寛解と完治の違い | 湯川リウマチ内科クリニック
3. 自分に合った働き方を考える
うつ病の既往歴がある方にもさまざまなタイプの方がおり、個人個人で適した働き方(雇用形態・職種・労働時間など)が異なります。1で自己理解を深めた結果、自分の場合はどんな働き方が合っているのかということを慎重に考えましょう。
たとえば、自分がうつ病になった原因などを振り返り、同じような環境で再就職すると再発の恐れがあるため、そのような職場は避けることが重要です。
前章と重なる部分もありますが、うつ病の方の再就職の方法には下記のようなものがあります。
応募時にうつ病を開示し、寛解を伝える
まず、うつ病のことを開示して一般枠に応募する方法です。誠実で正直であることをアピールできる反面、前述のように厳しい目で見られ、採用を見送られる可能性もあります。
寛解しているなど現在の状態を伝えるとともに、仕事で活かせる自分の経験やスキルをしっかり伝え、企業が求める人材であることをアピールしましょう。
うつ病について伝えずに選考試験を受ける
転職理由や前職退職後の空白期間を、キャリア形成のための勉強期間とするなどして、うつ病や治療期間のことを伝えずに選考を受ける方法です。
病気を開示して一般枠を受ける場合に比べて、うつ病が避けられがちな大手企業や有名企業での採用の可能性が高まるかもしれません。しかし、空白期間中のエピソードの用意や、面接官にうまく伝える話術などが求められます。
障害者枠での就労も検討を
障害者雇用枠で働くのも一つの方法。病気に対して一定以上の理解があり、休憩や通勤などに配慮してもらえるというメリットがあります。一緒に働く周りの人々に、症状に応じた配慮の依頼もしやすいでしょう。
うつ病のことを隠し、我慢して一般枠に就くと、プレッシャーや後ろめたさなどを感じる方も多いです。それよりも、障害を開示して障害者枠で再就職したほうが精神的に楽に働ける可能性があります。
うつ病の方も自分に適した職場への再就職は十分可能

うつ病だからといって「再就職は難しい」「自分はもう働けない」などと諦める必要はありません。
たしかに、真正面からうつ病を開示して一般枠で採用してもらうのは厳しいかもしれませんが、開示せずに働く方法や、障害者雇用枠で応募する方法など、選択肢はいくつもあります。
うつ病の方が働きやすい職種や環境もたくさんあるので、自分の状態などを考慮しながら、適切な職場・働き方を見つけましょう。また、再就職を目指す転職活動の際には、上記で紹介した支援サービスを利用するのがおすすめです。
転職におけるゴールは「採用されること」ではなく「自分らしく働ける環境で長く続けること」だと言えます。その視点で、 障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。
今の職場を続けていくことに将来的な不安を感じている方、障害があってもキャリア成長や自己実現を諦めたくない方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。
DIエージェントは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠の就職・転職について情報提供や、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりの実現したい働き方を提案させていただきます。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。







