鬱病(うつ病)で休職するには?必要な手続き・期間・過ごし方・復職のポイントを解説

うつ病と診断され、仕事はどうすればいいのかと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。実際に「もう仕事ができないかも」「働くのはつらい」という思いを抱えている方は少なくありません。

しかし、職場によっては「休職」ができる可能性もあるので、検討してみるとよいでしょう。

今回は、休職制度について解説し、手続き方法やうつ病での休職期間の目安などもお伝えします。今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。

うつ病の方が転職に成功した事例もあるので、ぜひ参考にしてください。

休職制度とは

休職制度とは

休職制度とは、病気やケガなどの理由で従業員を業務に就かせておくことが困難または不適切と判断した場合に、雇用者が該当の従業員の雇用を継続しつつ労務を免除または禁止させる制度です。

通常「仕事ができない」状態は解雇の対象ですが、休職制度によって解雇を一定期間猶予し、休ませて回復を待ってくれます。

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うつ病で休職する方は多い?

うつ病で休職する方は多い?

うつ病でも仕事に行き続ける方はいますが、休む方も多いです。

うつ病のみのデータではありませんが、厚生労働省が発表した調査結果によると、メンタルヘルス不調による1ヶ月以上の休職、または退職者がいた事業所の割合は、10~29人規模では7.5%と1桁台ですが、規模が大きくなるにつれて増えていき、100~299人規模で過半数の55.3%、1,000人以上規模ではなんと91.2%にのぼります。

引用元
結果の概要|厚生労働省

うつ病で仕事を休むときの手続きの流れ

うつ病で仕事を休むときの手続きの流れ

つづいて、うつ病と診断された場合に休職するためにはどのような手続きをどんな流れでやればいいのかを見ていきましょう。

なお、休職せずに辞める方法もありますが、休職期間中に様子を見ながら検討してもかまわないので、職場に休職制度がある場合はぜひ利用してください。

1.医療機関で診断書を書いてもらう

まずは担当医にうつ病の診断書を書いてもらう必要があります。発行には数日~数週間を要することもあるので、早めに依頼しましょう。

なお、自分がうつ病かもと感じたときに相談しやすい医師がおらず、うつ病の診断を受けられる病院を探したい場合、職場の産業医などに相談して紹介してもらう方法もあります。

 
キャリアアドバイザー
「家族がいる場合は、家族に病気のことを伝えて理解を得ることも重要です」

2.職場の休職制度について確認する

休職制度は義務ではないため、職場によっては導入されていないかもしれません。また、適用の対象に関する規定もあるので、就業規則などでチェックするとともに、人事や総務、上司などに確認を取る必要があります。

制度について職場に確認したい項目を下記で押さえましょう。

給料・手当

企業の規定によって異なりますが、休職中は無給の場合が多いです。

こう聞くと「無収入は困る」と休職をためらう方もいるかもしれませんが、給料がもらえない場合は「傷病手当金」(詳細は後述)を受け取れる可能性があります。傷病手当金の目安は、給料の3分の2程度と考えておきましょう。

社会保険

健康保険や厚生年金といった社会保険は、休職中も発生する費用。無給では給料からの天引きができないため、会社が立て替えて後から清算するというケースが多いですが、支払い方法を確認しておくと安心でしょう。

休職可能な期間

どのくらい休職が認められるかも企業ごとに異なります。休職する理由や勤続年数などで違いを設けている企業もあるようです。

自分の休職できる期間が、医師が判断した「必要な休養期間」より短い可能性もあるでしょう。休職期間が満了したときにまだ休職理由(うつ病)が解消されていなければ、自然退職や解雇という扱いになることもありえます。

そのほかに休職中に会社とのやりとりが必要になる場合もあるので、どうやって連絡を取るかという手段や連絡頻度、担当者なども確認しておくことが大切です。うつ病という病気の特性上、あらかじめ決まっていれば、心身の負担も比較的抑えられるでしょう。

復職方法

休養したのち復職が可能になったときにどうやって復帰するか、復職の条件はどんなものなのかなどを確認することも大切です。スムーズに復職できるよう、しっかり理解しておきましょう。

3.必要な休職手続きを行う

診断書の準備ができ、確認しておくべき内容がわかったら、職場に必要な書類を提出して休職の申請をします。これで休職の手続きは完了です。

休職中に傷病手当金をもらうには?4つの条件

休職中に傷病手当金をもらうには?4つの条件

社会保険に加入している場合、休職中は給料の支給がなくても、前述したように「傷病手当金」を受け取れる可能性があります。傷病手当金とは、ケガや病気による休業の際に被保険者や家族の生活を保障してくれる制度です。

そこで、傷病手当金を受け取るための4つの条件について理解しましょう。

引用元
病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会

1.業務外の事由で療養するための休職であること

まず、業務外の理由での休業であること。傷病手当金は、健康保険での病院受診・治療に限らず、自費診療の場合でも、業務外の病気やケガによって働けないことの証明があれば受給できることが特徴です。入院でなく自宅療養の場合でも受け取れます。

業務外の事由かどうかの判断は、人事や健康保険組合に確認しましょう。

 
キャリアアドバイザー
「傷病手当金の支給対象にならないケースもあります。たとえば、業務上の事由で休職する場合は労働災害(労災)に当たりますし、美容整形などは病気とみなされないため、いずれも対象外です」

引用元
労働災害(労災)とは|ベリーベスト法律事務所

2.仕事ができない状態であること

次に、1で判断された病気やケガのために「働けない」状態であること。この際、休業を希望する側が自己判断で「仕事ができない」と申告するのではなく、病気・ケガの状態や任されている仕事内容を考慮し、医師など療養担当者の意見をもとに判定されます。

3.連続した3日間を含む4日以上働けなかったこと

傷病手当金は、1の事由によって仕事を休んだ日から続けて3日間(待期)経ち、4日目以降も仕事に就けなかった場合に、4日目以降から支給されます。つまり、待期の間は手当の支給対象外。ただし、待期には土日や公休日なども含まれます。

 
キャリアアドバイザー
「続けて2日休んで1日働き、また2日休むというようなケースでは待期が完成したとみなされず、傷病手当を受けられません。しかし、続けて3日間休んで待期が完成したのちに仕事をし、再び同じ事由で休むことになった場合は、4日目以降の分が支給されます」

4.休業中に給料が支給されないこと

傷病手当金は業務外の病気やケガで休業する際に生活保障をしてくれる制度なので、休職している間に職場から給料をもらえる場合は給付されません。ただし、支払われる給料が傷病手当の金額より低い場合は差額を受け取れます。

うつ病での休職期間の目安と休職中の過ごし方

うつ病での休職期間の目安と休職中の過ごし方

うつ病で休職する際の期間の目安はどれくらいで、休職期間中はどのように過ごせばいいのでしょうか。

休職期間はどれくらい?

やや古いデータですが、「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」によると、うつ病を含む精神的不調での1回目の病休日数の平均は107日(約3.5ヶ月)という結果があります。

この病休期間はうつ病だけのデータではなく、また、あくまで平均値のため、目安として理解しておきましょう。

また、休職期間はうつ病の度合いによっても変わり、軽度で1ヶ月、中度で3~6ヶ月、重度で1年~1年半程度というケースが多く見られます。企業ごとに休職可能な期間も異なるため、事前に確認しておくと安心です。

引用元
主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究|厚生労働省
企業におけるメンタルヘルス不調による休職者の職場復帰に向けた対応|障害者職業総合センター

 
キャリアアドバイザー
「うつ病が重症化すると休職期間も長引きやすくなるので、早めに医療機関にかかって診断を受け、休職することをおすすめします」

仕事を休んでいる間はどう過ごす?

休職中はどのように過ごせばいいのか、うつ病の段階別に解説します。

休養期(要治療期)

休養期は病気の症状が重く、心身に負担がかかる時期です。そのため、治療に専念し、仕事やストレスの要因から離れて休養に努めましょう。体調の安定を優先することが第一なので、1日中ゆっくり寝て過ごしても、罪悪感を感じる必要はありません。

主治医の指示に従い、必要に応じて薬も服用してください。

リハビリ期(回復期)

リハビリ期は、うつ病の症状が軽減してきた時期です。いきなり激しく体を動かしたり活動量を増やしたりするのではなく、無理のない範囲で、リラックスやストレス解消のための活動を行いましょう。

徐々に体を慣らしていくことが大切なため、疲労が残らず「楽しい」と感じられることをするとよいでしょう。人との交流も再開してかまいませんが、いきなり大人数と関わるとストレスになりがちなため、少しずつ輪を広げていくことが重要です。

調整期(準備期)

調整期は、仕事復帰や転職に向けて準備を始める時期です。睡眠・食事・活動といった生活リズムを整えましょう。

また、通勤の練習や、勤務時間に合わせたスケジュールでの生活を行うことも大切です。復職・再就職に向けた体力づくりもしておくとよいでしょう。

うつ病から仕事に復帰するときのポイント・注意点

うつ病から仕事に復帰するときのポイント・注意点

ここまでは、休職の流れや休職中のことについて解説してきました。うつ病の方が上記のように休職を経たのち、復職するときは、下記の点に留意することが大切です。

1.自己判断でタイミングを決めない

いつ復職するかは自分勝手に決めるのではなく、担当医・産業医・上司などと相談しながら決めましょう。

担当医が「復職可能」と判断しても、職場にとっての「回復」基準には達していない可能性もあり、復職しても再発する恐れがあるため、慎重に決定する必要があります。治療も勝手にやめないようにしてください。

2.無理をしない

復職後にいきなり元の業務量をこなそうとしたり、休職した分を取り戻そうと頑張りすぎたりすると、結局心身に負担がかかって再発する可能性があります。そのため、再発のリスクを考え、様子を見ながら働くことも非常に重要です。

3.ストレスに対処する術を身につける

生活や仕事をするなかで、ストレスを全く感じないことは難しいです。そのため、ストレスを発散するだけでなく、自分のストレスの受け止め方やストレスに対する考え方を理解し、コントロールしながらうまくつき合っていく「ストレスマネジメント」も大切です。

ストレスに向き合いながら、自分なりの気分転換方法や対処法を見つけましょう。

4.試し出勤やリワークプログラムを利用する

休職したのち、職場によっては、いきなり完全復帰するのではなく「試し出勤」ができることもあります。勤務時間を別室で過ごしてみる・軽作業で体を慣らすなど、さまざまなやり方があるので、上司に相談してみてください。

また、精神的な疾患で休職した方に対し、スムーズな職場復帰を支援するサービス「リワークプログラム(復職支援プログラム)」を利用するのもおすすめです。

リワークプログラムは、病院や地域障害者職業センターなどが実施するほか、企業が自社社員に向けて独自に行っていることもあります。仕事の勘を取り戻すために、ぜひ活用してみましょう。

引用元
〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜改訂|厚生労働省

うつ病回復後の転職活動を支援してくれるサービス

うつ病回復後の転職活動を支援してくれるサービス

休職後に体調が良くなっても、復職せずに辞めて転職する方法もあります。そこで、再就職のための相談に乗ってくれ、活動をサポートしてくれる機関やサービスを紹介します。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター一覧(計337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

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うつ病では無理をせず休職して心身を休めよう

うつ病では無理をせず休職して心身を休めよう

うつ病になった場合、職場の休職制度を利用して仕事を休みながら療養できる可能性があります。休職制度が設けられていない企業もありますが、今の仕事を続けたいなら、まずは一度職場に相談してみましょう。

なお、うつ病の休職期間は数ヶ月にわたるケースが多く、体調の段階に応じた過ごし方に勤めることが大切です。まずはしっかり心身を休め、回復してきてから仕事についてゆっくり考えれば大丈夫です。また、状況によっては、休養したのちに転職を検討してもかまいません。

転職の際は「自分らしく働ける環境で長く続けること」が重要で、障害の特性に合った業務に就くことや、障害への理解や配慮のある環境選びが大切です。

DIエージェントでは、「障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働ける社会をつくる」ために、障害者枠の就職・転職についての情報提供や、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。

専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、お一人おひとりの実現したい働き方を提案しますので、就職・転職はまだ検討段階という方もぜひお気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。