発達障害の方が障害者手帳を取得する方法やメリット・デメリットについてまとめました。日常生活で困難を感じることがある場合、手帳の取得や活用が役立つことがあります。ここでは申請の流れから手帳の種類、さらに仕事との関わりまで幅広く解説します。
発達障害にはADHD(注意欠如・多動症)をはじめとした複数の種類がありますが、症状や困りごとは人によって異なる場合があります。自分に合うサポートを見つけるためにも、手帳の取得要件や手続きの流れを正しく把握することが大切です。障害者手帳を持つかどうかは任意ですが、手続きの前にメリットとデメリットをしっかり検討しましょう。
また、障害者雇用制度や就労支援サービスを活用することで、仕事やキャリアをスムーズに進めやすくなるケースもあります。各種支援を有効に使いながら、自分の特性に合った働き方を見つけることが重要です。本記事を参考にしながら、ぜひ最適な選択を考えてみてください。
発達障害とは

発達障害の基本的な種類や症状の特徴を知ることで、自分や周囲の理解を深めることができます。
発達障害とは、生まれつき脳機能の特性により、コミュニケーションや行動面での困難が生じやすい状態を指します。代表的なものとして、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)が挙げられます。これらの障害は個人差が大きく、環境への適応や周りのサポート次第で大きく状況が変わることがあります。
障害者手帳とは
障害者手帳の役割や種類、受けられるサービスについて説明します。
障害者手帳とは、公的に障害の状態を証明するための制度で、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の三種類に分かれます。ADHDを含む発達障害の方の場合は、主に精神障害者保健福祉手帳や、知的障害がある場合は療育手帳の対象となることがあります。手帳を取得すると、税金の控除やNHK受信料の減免など、さまざまな優遇サービスを利用できる可能性があります。
発達障害の方は障害者手帳を取得できる?

発達障害の方でも障害者手帳を取得できる場合があります。その条件やポイントを解説します。
発達障害の方が障害者手帳を取得するためには、医師の確定診断や生活上の困難度など、一定の基準を満たすことが必要です。具体的には、初診日から一定期間以上経過していることや、就労や日常生活に支障があることなどが考慮されます。申請要件や手続きは自治体によって異なるため、事前に窓口へ確認しておくことが重要です。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、ADHDなどの発達障害が日常生活に支障をきたす場合に対象となることがあります。取得には精神科医による診断書が必要で、手帳の等級は症状の程度を踏まえて認定されます。更新は基本的に2年ごとに行われ、最新の診断書を提出して等級の見直しを受けます。
療育手帳
療育手帳は、知的障害を伴う発達障害の方が取得できる手帳です。自治体によって等級や認定基準が異なり、心理判定や発達検査などを経て認定されます。生活面でサポートが必要な場合は、療育手帳を取得することで利用できるサービスの幅が広がることがあります。
「グレーゾーン」での障害者手帳取得は可能?
発達障害の症状が明確でない、いわゆるグレーゾーンの状態の場合でも、生活上の困難度が高いと判断されれば手帳を取得できる可能性があります。ただし、医師の診断や検査結果など客観的なエビデンスが求められるため、まずは専門機関でよく相談することが大切です。無理に診断を急ぐのではなく、自身の状態を正確に把握してから申請の可否を判断しましょう。
発達障害の方が障害者手帳を取得する方法・流れ

実際に手帳の申請をする際の手順を、わかりやすくまとめました。
障害者手帳を取得するための手続きは、主治医の診断書や必要書類を準備して自治体の窓口へ申請するという流れが一般的です。書類提出後は審査が行われ、認定が下りれば手帳の交付を受けることができます。手続きには1〜2ヶ月ほどかかる場合があるため、余裕を持って準備しましょう。
精神障害者保健福祉手帳の取得方法
精神障害者保健福祉手帳の場合、まず精神科医や心療内科での診察を受け、診断書を作成してもらいます。次に、市区町村の障害福祉課などで申請書を記入し、診断書や写真など必要書類を提出します。審査期間を経て認定されれば、手帳が郵送または窓口で交付されます。
療育手帳の取得方法
療育手帳の取得には、知的障害の程度を確認するための検査を受ける必要があります。申請時に自治体が指定する専門機関で判定を行い、結果が一定の基準を満たせば交付されます。自治体ごとに独自の基準が設けられているため、事前に詳しい手続きを確認しておきましょう。
ただし、両方持つことによって大きなメリットやデメリットがあるわけではありません。
障害者手帳の取得におけるメリット・デメリット

障害者手帳の取得によるメリット・デメリットを整理し、取得の検討材料としましょう。 障害者手帳は、取得することで公共交通機関や施設利用の割引、税金控除など経済的なサポートを受けやすくなります。一方で、障害者手帳を持つことへの周囲の誤解や自分自身の心理的な抵抗を感じる場合もあります。メリットとデメリットをよく比較して、自分の生活スタイルに合う形で検討することが大切です。
障害者手帳を取得するメリット
障害者手帳を取得すると、税制優遇や福祉サービスの拡充に加え、障害者雇用枠への応募が可能になるなど、就労面での選択肢が増えます。さらに、NHK受信料の減免や公共料金の割引など、日常生活の負担軽減につながる制度も活用しやすくなります。特に、ADHDなど発達障害でサポートが必要な方には、手帳を通じて支援を得やすくなる利点があります。
デメリットはある?
障害者手帳を持つことを周囲に知られることで、偏見や誤解を招く可能性もゼロではありません。また、公的証明として公式に障害を認定されたという事実に、当事者自身が気持ちの上で抵抗感を抱く場合もあります。手帳取得はあくまで任意であり、メリット・デメリットを総合的に考慮して判断することが求められます。
発達障害の方の就職・転職活動に役立つサービス

発達障害の方が就職・転職活動を行う際に役立つ公的・民間のサービスを紹介します。
発達障害がある方の就職や転職活動では、自己理解と最適なサポート体制の確保が重要です。公的機関が運営する支援策から、民間のエージェントまで、利用できるサービスは多岐にわたります。自分がどのようなサポートを受けたいのかを整理し、必要な協力を得ることで、よりスムーズに就労や転職を進められます。
ハローワーク
ハローワークでは、障害者雇用に特化した求人情報や各種相談窓口が用意されています。発達障害の方も、専門のスタッフと相談しながら自分に合った職場を探すことが可能です。応募書類の書き方や面接対策など、就職に関する具体的な情報提供も受けられます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、職業相談や職業準備支援など、就労に向けたサポートを総合的に行っています。専門のカウンセラーが個別に状況を把握し、就労目標の設定や職場実習などをサポートします。発達障害ならではの課題や苦手分野を踏まえながら、実践的な支援を受けられるのが特徴です。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所では、働くための基礎スキルからビジネスマナー、職種に応じた研修など、幅広い学習機会が提供されています。職場実習や面談、企業見学などを通して、自分に合った仕事のスタイルを見極めやすくなります。就職後の定着支援まで一貫してフォローを受けられるのも大きな利点です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就業だけでなく生活面でのサポートも含めてトータルに支援します。通院や生活習慣の管理などの相談にのってくれるため、仕事と生活のバランスをとりながら就労を続けることが可能です。地域に根ざしたサポートが受けられるので、長期的な視点で利用できるメリットがあります。
引用元
【令和7年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001242595.pdf
障害者向け転職エージェント
障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。
障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。
就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。
発達障害での障害者手帳取得は可能

発達障害と診断された場合、精神障害者保健福祉手帳(知的障害がある方は療育手帳)を取得できる可能性が高いです。手帳を交付してもらうと、特に経済面で多くのメリットがあるので、ぜひ取得を検討してみてはいかがでしょうか。
障害者手帳があれば障害者枠にも応募できるため、より自分らしく働けるようになるかもしれません。今回紹介した求人の例を参考に、自分に合った仕事探しをしてみてください。
なお、発達障害の方が就職・転職活動をする際は、「DIエージェント」のご利用がおすすめです。DIエージェントでは、障害をお持ちの方一人ひとりが自分らしく働けるよう、就職・転職についてのアドバイスや、ご希望に沿った障害者枠の求人紹介を行っております。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。







