障害をお持ちの皆さまにとって、「働く上で必要な配慮」を会社にどう伝えるかは、大きな悩みの種ですよね。「合理的配慮をお願いしたいけれど、わがままだと思われないか不安…」「面接で伝えたら、選考に不利になるのでは?」といったお悩みを持つ方は非常に多くいらっしゃいます。
この記事では、「合理的配慮」の本来の意味から、ご自身の特性に合わせた伝え方、さらには「わがままとの違い」まで、専門用語をかみ砕いて分かりやすく解説します。
合理的配慮とは?

平成25年に制定された「障害者差別解消法」は、障害のある方もない方も、分け隔てられることなくお互いの個性や人格を尊重し合える社会をつくるための法律です。
この法律では、障害を理由とした「不当な差別的取り扱い」を禁止するとともに、企業や行政に対して「合理的配慮の提供」を求めています。さらに、令和3年5月の障害者差別解消法の改正により、民間事業者に提供を求める「合理的配慮」が義務化されました。
合理的配慮とは、ご自身から「働く上でこんなサポートがあると助かります」と意思を伝えた際に、企業側が無理のない範囲(過重な負担にならない範囲)で環境を整えることを指します。
もちろん、設備や費用の関係で関係で、必ずしもすべての希望がそのまま通るわけではありません。しかし、もし希望通りの対応が難しい場合でも、企業側には「なぜ難しいのか」を丁寧に説明し、「それならこの方法でカバーできないか」と別のやり方を提案したり、お互いが納得できるまで話し合ったりする姿勢が求められています。
内閣府障害を理由とする差別の解消の推進
事業者が合理的配慮を断ることが認められるケース
「過重な負担」にあたるかどうかは、以下のような要素を複合的に判断して決まります。
- 物理的な制限:
スペースがなく物理的に設備の導入が不可能。 - 費用負担:
企業の規模や財務状況に対して、莫大な費用がかかる。 - 業務への影響:
その配慮をおこなうことで、本来の業務目的が達成できなくなる。
「どこまで要求して良いのだろう?」と不安になるかもしれません。ポイントは「絶対にこれがないとダメ」と決めつけず、お互いが歩み寄れる着地点を探る姿勢を持つことです。
合理的配慮を求めるときの流れ

合理的配慮をお願いする際、「特別扱いしてほしいと言っているようで、罪悪感がある…」というご相談をよく受けます。 合理的配慮は「特別扱い」ではありません。「スタートラインを他の人と同じにするための正当な調整」です。 例えば、「目が悪い人がメガネをかけること」をズルいとは誰も思いませんよね。それと同じで、障害というハードルを取り除き、本来の力を発揮できるようにするための権利なのです。
大切なのは「自分ができること(自己対処)」と「相手にお願いしたいこと」をセットで伝えるスタンスです。「私は工夫してここまでやります。ここから先は難しいのでサポートをお願いできますか?」という基本姿勢を持つことで、交渉がぐっとスムーズになります。
ここでは実際に合理的配慮を求めていくステップをご紹介します。
1. 自分から申し出る
まずは「困りごと」と「必要な配慮」を意思表明します。
- 診断名や障害特性をどこまで伝えるか考える
自分の特性をすべて洗いざらい話す必要はありません。「業務に関係する困りごと」に絞って伝えるのがポイントです。 - 職場・就職活動で伝える場合のポイント
履歴書や職務経歴書と一緒に「障害について(ナビゲーションブック)」を提出し、「いつ」「どんな場面で」「どういう配慮が必要か」を具体的に伝えましょう。
2. 本人と事業者で話し合う
申し出を受け、事業者と「何ができるか」をすり合わせます。
- 配慮内容を一緒に具体化していくコツ
「困りごと→発生する場面→具体的な配慮案」の順番で整理すると、相手に伝わりやすくなります。 - 合意した配慮内容を文書に残しておくメリット
話し合いで決まった内容は、後々のトラブルを防ぐため、面談記録や雇用契約書として文書に残してもらうことをおすすめします。
3. 合理的配慮を実施
決定した内容に基づいて、職場で配慮が提供されます。
4. 定期的な見直し
配慮の内容は一度決めたら終わりではなく、業務内容や体調の変化に合わせて定期的に見直すことが大切です。
合理的配慮を求めるときの注意点

専門家にアドバイスしてもらう
自分一人で配慮内容を整理するのは難しいものです。そんな時は専門機関を頼りましょう。
- ハローワーク:障害者専門窓口があります。相談時には障害者手帳や配慮希望リストを持参するとスムーズです。
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
- DIエージェントなどの転職支援サービス
周囲とのすり合わせや周知をしっかりとおこなう
合理的配慮の内容を決めたり職場に周知したりするために、基本的に障害の内容を開示することが求められます。 配慮を受ける理由を職場の仲間に正しく知ってもらうことで、「なぜあの人だけ?」という不公平感をなくし、お互いが働きやすい環境を作ることができます。もちろん、開示範囲や開示方法は本人の意思を尊重しながら相談して進めていきますが、厚生労働省等の事例でも「周囲との認識のズレ」がトラブルの原因になることが多いため、周知は非常に重要です。
職場での合理的配慮の実施例

発達障害に関する合理的配慮
- 吃音の特性により緊張すると言葉が出にくくなる状態だったため、「回答に時間がかかることへの理解」を求めた
➡事前に面接官へ周知され、「身振り手振りでも大丈夫ですよ」と急かさずに話を聞いてもらえた - 曖昧な指示だと優先順位がつけられず混乱してしまう状態だったため、「具体的な手順での指示」を求めた
➡「Aの作業が終わったら、次はBです」と優先順位を明確にして指示をもらえるようになった - オフィスの雑音が気になり業務に集中できない(聴覚過敏がある)状態だったため、「防音対策」を求めた
➡業務中のノイズキャンセリングイヤホンの着用を認めてもらえた
視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害に関する合理的配慮
- 視覚障害:
音声読み上げソフトの導入、資料の拡大コピー - 聴覚障害:
手話通訳や音声文字化ソフトの導入、業務マニュアルの完備 - 肢体不自由:
机の高さの調整、車いすで移動しやすい動線の確保 - 内部障害:
通院のためのフレックスタイム制の活用や、体調不良時に休めるベッドの用意
合理的配慮を伝えて、お互いが働きやすい職場に

「配慮をお願いしたら、採用で見送られやすくなるのでは?」という心配もよく耳にしますが、適切な選考判断と差別的な扱いの線引きは法律でも定められており、必要な配慮を堂々と伝えることは、あなたを守り、長く活躍できる場所を見つけるための「強み」になります。
DIエージェントでは、年間多くの障害をお持ちの方の就職・転職をサポートしています。「どう伝えれば企業に受け入れられやすいか」「自分に合う配慮のラインはどこか」など、専任のキャリアアドバイザーが丁寧にヒアリングし、あなたに寄り添った働き方を提案させていただきます。
「今の働き方に無理がある気がする」「どう伝えればいいか分からない」という方は、まだ検討段階でも構いません。ぜひお気軽にDIエージェントへご相談ください。私たちがあなたの戦略的パートナーとして、全力で伴走いたします!
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。


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