大人の学習障害(LD/SLD)とは?仕事の「しんどさ」を和らげるヒントと、自分らしく働くためのポイント

「仕事でミスが続いてしまうのは、自分の努力が足りないからなのだろうか……」 「マニュアルを読むのが極端に遅かったり、会議の議事録がどうしても書けなかったりする」

社会人になってから、このような「特定の業務だけが極端にできない」という悩みに直面し、自信を失っていませんか? もし、全般的な知能の遅れはないのに、「読む・書く・計算する」などの特定分野だけに著しい困難を感じる場合、それは学習障害(LD/SLD)という特性が関係している可能性があります。

学習障害は、決してご本人の「やる気」や「努力」の問題ではなく、脳の情報処理機能の偏りによるものです。 本記事では、大人の学習障害(LD/SLD)の正しい定義や診断基準、タイプごとの具体的な困りごと、そして仕事を長く続けるためのポイントについて、公的なデータや実際の支援事例を交えて詳しく解説します。

読み進めることで、ご自身の特性を整理し、無理なく自分らしく働くためのヒントを見つけていただければ幸いです。

学習障害(LD/SLD)とは?

学習障害(LD/SLD)とは?

学習障害とは、全般的な知的発達には遅れが見られないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった特定の能力の習得や使用に、著しい困難を示す発達障害の一種です。

インターネット上では様々な情報が混在していますが、実は「教育分野」と「医療分野」で定義や呼び名が少し異なることをご存知でしょうか。まずはその違いを整理しましょう。

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LDとSLDの正式名称と略語の意味

一般的に広く使われる「LD」Learning Disabilities(学習障害) の略称で、主に日本の教育現場や文部科学省などの行政で使われる総称です。 一方、近年の医療現場や国際的な診断基準では 「SLD」 つまり Specific Learning Disorder(限局性学習症/学習障害) という名称が正式に用いられます。

どちらも指している特性はほぼ同じですが、大人が診断書をもらう際や専門書を読む際は「SLD(限局性学習症)」と表記されることが多いと覚えておくと良いでしょう。

教育的定義と医学的定義の違い

自分がどの基準に当てはまるかを知るために、2つの定義の違いを詳しく知っておくことが大切です。

  • 教育的定義(文部科学省など)
    「学習障害(LD)」という言葉を使用します。主に学校教育において、通級などの特別な支援が必要かどうかを判断するための基準です。「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」の6つの能力のうち、特定のものの習得に困難がある状態を指します。
  • 医学的定義(DSM-5など)
    「限局性学習症(SLD)」という診断名を使用します。医師が診断を下す際に用いる国際的な基準で、主に「読む(読字)」「書く(書字)」「計算する(算数)」の3つの学習領域に焦点を当てて診断されます。

LDと知的障害・他の発達障害との違い

「自分は他の障害とも重なっているのではないか?」と不安に思う方もいるかもしれません。違いを明確にしておきましょう。

  • 知的障害との違い
    学習障害は「全般的な知的発達に遅れがない」ことが大前提です。全体的な理解力や会話力はあるのに、特定の学習スキルだけが極端に苦手な点が異なります。
  • ADHDやASDとの違い
    ADHD(注意欠陥多動症)やASD(自閉スペクトラム症)は行動や対人面に特性が出やすいのに対し、学習障害は「読み書き計算」などの学習スキルに特化した困難です。ただし、これらを併発(重複)しているケースも珍しくありません。字列

学習障害(LD/SLD)の主な3つのタイプと特徴

学習障害(LD/SLD)の主な3つのタイプと特徴

学習障害(LD/SLD)は、苦手な分野によって大きく3つのタイプに分類されます。それぞれの特徴と、大人になってから仕事や生活で現れやすい具体的な困りごと(サイン)を見ていきましょう。ただ、これらは明確に分かれているとは限らず、「読むのも書くのも苦手」「計算と書くことが苦手」といったように、複数の困難が重なっているケースも多く見られます。そのため、「自分はどれにも当てはまらないかも?」と思わず、複合的な視点で捉えることも大切です。

1. 読字障害(ディスレクシア)

文字を読むことに特異な困難があるタイプです。視力には問題がないのに、脳が文字を音に変換する処理などがスムーズにいかないことが原因とされています。

読字障害の具体的な困りごとの例
  • 仕事
    業務マニュアルや長文のメールを読むのに非常に時間がかかる。会議資料の文字が歪んで見えたり、行を飛ばして読んでしまい内容を取り違えたりする。
  • 生活
    駅の電光掲示板や映画の字幕を瞬時に読み取れない。役所の書類の記入欄の指示を読み間違えてしまう。

2. 書字表出障害(ディスグラフィア)

文字を書くことに困難があるタイプです。読字障害と併発することも多く、文字の形を想起して手で再現することに脳の負担がかかります。

書字表出障害の具体的な困りごとの例
  • 仕事
    会議のホワイトボードや口頭指示のメモを書き取れない。パソコンなら打てるが手書きだと誤字脱字が極端に多い。枠の中に文字を収めることが難しく、手書きの報告書作成が苦痛。
  • 生活
    宅配便の伝票や役所の申請書類など、手書き必須の場面で時間がかかる。鏡文字(左右反転した文字)を無意識に書いてしまう。

3. 算数障害(ディスカリキュリア)

数字の概念理解や計算、推論に困難があるタイプです。数字そのものの意味がつかみにくかったり、暗算が極端に苦手だったりします。

算数障害の具体的な困りごとの例
  • 仕事
    お釣りの計算や経費精算ができない。グラフや表の読み取りが苦手で分析ができない。時間の見積もりが立てられず、スケジュール管理が破綻しやすい。
  • 生活
    アナログ時計が読めない、または読むのに時間がかかる。割り勘の計算がとっさにできない。お買い物の合計金額が推測できない。

年齢別に見られやすいサイン

年齢別に見られやすいサイン

学習障害(LD/SLD)は生まれつきの特性ですが、いつ「困りごと」として表面化するかは、求められる環境やタスクのレベルによって異なります。

学齢期(小学生~高校生)で気づきやすいサイン

音読で行を飛ばしたりたどたどしかったりする、板書をノートに書き写すのが極端に遅い、九九や繰り上がりの計算がいつまでも定着しない、などが典型的なサインです。

大学生・専門学校生で気づきやすいサイン

レポート作成で構成が組み立てられない、参考文献を読み込めない、あるいはアルバイト先でレジ打ちのミスが多発する、オーダーを素早く書き取れないといった場面で初めて気づくことがあります。

社会人になって気づきやすいサイン:「大人の学習障害」

学生時代は友人のサポートや得意科目でのカバーでなんとかなっていたものの、就職して初めて壁にぶつかるケースです。

  • 電話対応しながらメモが取れない(マルチタスクの困難と書字困難の複合)
  • 口頭指示は理解できるが、文字のマニュアルを渡されると理解できない
  • 経理業務などで、見積書や請求書の数字ミスがどうしても直らない

大人の学習障害(LD/SLD)と診断される基準

大人の学習障害(LD/SLD)と診断される基準

「もしかして自分もそうかもしれない」と思った場合、医療機関での正確な診断を受けることが次のステップになります。

国際的な診断基準(DSM/ICD)の概要

診断には、主に米国精神医学会のDSM-5(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)や、その改訂版であるDSM-5-TR(2022年)などが用いられます。 基準の概要としては、「読み・書き・計算」のスキルのうち少なくとも1つに困難があり、それが適切な教育を受けているにも関わらず6ヶ月以上持続していること、などが挙げられます。

診断を受けたい時はどうする?

大人の発達障害外来がある「精神科」や「心療内科」を受診します。 初診の際には、子どもの頃の通知表や、仕事でミスをしてしまった具体的なメモなどを持参すると、医師が幼少期からの特性を判断する際の重要な材料になります。

 
キャリアアドバイザー
大人の発達障害を専門に診られる病院はまだ少なく、予約が数ヶ月待ちになることも珍しくありません。
まずは一人で悩み続けず、お住まいの地域の「発達障害者支援センター」などの公的な相談窓口に問い合わせてみましょう。そこで、信頼できる医療機関の情報を教えてもらえることが多いです。
診断はゴールではなく、あくまで「自分に合った働き方」を見つけるためのスタートラインです。

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事を続けるためのポイント

学習障害(LD/SLD)をお持ちの方が仕事を続けるためのポイント

学習障害の特性があっても、自分に合った工夫を取り入れることで活躍されている方はたくさんいらっしゃいます。ここでは、DIエージェントが支援してきた事例をもとに、長く働き続けるためのポイントを紹介します。

アプリなどICTツールを活用する

苦手なことは、無理に根性で克服するのではなく、便利な「道具」に頼るのが一番の近道です。

  • 読むのが苦手 → PCの音声読み上げ機能、ボイスレコーダー
  • 書くのが苦手 → PC入力、音声入力アプリ、タブレット端末
  • 計算が苦手 → 電卓、表計算ソフト(Excel)の関数活用

周囲からの理解と「合理的配慮」を得る

業務上のミスが「努力不足」と誤解されないためには、自分の「取扱説明書」を職場に伝えることが大切です。これを「合理的配慮」と呼びます。

合理的配慮とは、障害のある人が力を発揮できるよう、職場環境やルールを調整すること。「わがまま」ではなく、法律で認められた正当な権利です。 LD(学習障害)の方の場合、「何ができないか」だけでなく、「どうすればできるか(代替手段)」をセットで伝えることが重要です

具体的な伝え方の例
  • 「書く」のが苦手
    「手書きは難しいため、会議のメモはPC入力やボイスレコーダーでの録音を許可してください」
  • 「読む」のが苦手
    「マニュアルの通読に時間がかかるため、音声読み上げソフトの使用や、口頭説明の併用をお願いします」
  • 「計算」が苦手
    「計算ミスを防ぐため、電卓の使用を必須にし、ダブルチェックの体制を作ってください」

このように、苦手な部分を道具やルールで補う提案をすることで、自分も周囲もストレスなく仕事が進むようになります。

障害者雇用枠での就職・転職を視野に入れる

一般枠ではどうしても「平均的な能力」が求められがちですが、障害者雇用枠であれば、上記のような「合理的配慮」を受ける権利が法律で守られています。 ご自身の能力を最大限に発揮するために、働く環境を変えるという選択肢も検討してみましょう

例えば、障害者雇用専門のエージェントでは、障害に詳しいカウンセラーがマンツーマンで、あなたの特性に合った求人を無料で紹介してくれます 。 実績豊富なエージェントは独自の採用ルートを持っていることが多く、一般には公開されていない求人に出会えるチャンスが広がるのも大きなメリットです 。

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自分に合った環境で、無理なく長く働こう

自分に合った環境で、無理なく長く働こう

大人の学習障害(LD/SLD)は、外見からは見えない障害だからこそ「怠けている」と誤解されやすく、ご本人も辛い思いを抱えがちです。 しかし、ご自身の「苦手」の正体を正しく理解し、適切なツールや配慮(環境)と組み合わせることで、仕事のパフォーマンスは劇的に変わります

「自分にはどんな仕事が向いているんだろう?」 「診断を受けたばかりで、これからどうすればいいか分からない」

そんな不安をお持ちの方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。 あなたの「できないこと」を責めるのではなく、「できること」を最大限に活かせる職場を、専任のキャリアカウンセラーと一緒に探していきましょう。

監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。