コミュニケーション障害とは、人との意思疎通に支障を抱える障害です。その度合いによっては、日常生活に限らず、仕事においても困難が生じる場合があります。
そこで今回は、コミュニケーション障害とはどのような障害なのかを詳しく解説した上で、特徴や種類、おすすめの仕事やセルフチェック方法を紹介します。今後の働き方を考える参考として、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みいただけると幸いです。
コミュニケーション障害とは

医学的にいわれる「コミュニケーション障害(コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群)」とは、言語を使って他者とコミュニケーションを取る際に支障が出る障害のこと。 診断名としては「社会的コミュニケーション症」という言葉も用いられますが、今回は一般的に知られている「コミュニケーション障害」と表現します。
コミュニケーション障害の症状としては、以下のようなものが見られます。
- 語彙力が低め
- 読み書きが上手にできない
- スラスラと会話することが難しい
- 文章を上手に組み立てられない
- あいまいな表現や言葉以外の表現(表情・ジェスチャーなど)の理解が難しい
- 場面に応じた話し方ができない(例:敬語を使うべき場面でくだけた話し方をする) など
医学的なコミュニケーション障害と「コミュ障」の違い
ネットスラングで使われる『コミュ障』は、人見知りや他人との関わりが苦手など、コミュニケーションが得意でない性格や人柄を指す言葉です。 これに対し、医学的な『コミュニケーション障害』は、脳機能や発達の偏りなどに起因する機能的な障害を指します。性格の問題ではなく、適切な診断と支援が必要な状態であるという点で、一般的に使われる「コミュ障」とは異なります。
どのようなときに「コミュニケーション障害」を疑うか
単なる「口下手」や「あがり症」とは異なり、日常生活や社会生活に著しい支障が出ている場合に疑われます。例えば、言葉がなかなか出てこないために会話が成立しない、相手の意図を全く読み取れずトラブルが絶えない、TPOに合わせた振る舞いが極端に苦手であるといったケースです。
- 幼少期・学齢期: 言葉の遅れ、吃音(どもり)、指示が通らない、集団行動がとれない、読み書きの困難などが見られます。
- 成人期(就労期): 報告・連絡・相談(ホウレンソウ)ができない、雑談が苦手、暗黙の了解がわからない、電話対応が極端に苦手、といった仕事上のトラブルで顕在化することが多くなります。
コミュニケーション障害の評価と診断の流れ
診断は、精神科や心療内科、小児科などの専門医によって行われます。 一般的には、問診(成育歴や現在の困りごとのヒアリング)、知能検査(WAISやWISCなど)、言語検査などを組み合わせて総合的に判断されます。また、聴覚や発声器官に身体的な異常がないかを診断することもあります。
コミュニケーション障害の種類と特徴

コミュニケーション障害は主に以下の5つの種類に分類されます。それぞれの特徴を解説します。
1.児童期発症流暢症/小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害(吃音)
児童期発症流暢症(小児期発症流暢症)とは、いわゆる「吃音(きつおん)」のことで、以下のような症状が見られます。
- 発語しにくい、どもる
- 一語の途中で不自然に途切れたり同じ音を繰り返したりする(「り…りりりんご」など)
- 一語の途中に不要な引き伸ばしが入る(「りーーんご」など)
- 言いにくい言葉を避けるために遠回しな表現を使う など
そのため、相手に伝えたいことがうまく伝わりづらく、スムーズな会話が難しくなります。急ぐ必要があるときや重要な仕事など、ストレスやプレッシャーを感じるとひどくなる傾向があります。
専門的な言語聴覚療法などによって、症状をコントロールする方法を学ぶことも可能です。
2.語音症/語音障害
語音症とは、脳や耳などに異常がないのに、言葉をうまく発せられないものです。
話すときに、口の開き方・呼吸・舌の動きのいずれかが何らかの理由によってうまく機能せず、発語が困難になって会話による意思疎通が難しくなります。 言語の発達には個人差があるため、いつからと特定することは難しいですが、幼少期に発症することが多いとされています。ただし、治療によって改善できるケースも多いです。
3.言語症/言語障害
言語症とは、話すこと・書くことに支障があるもので、以下のような症状が見られます。
- 使える語彙量が少ない
- 文を上手に構成できない(主語や述語など)
- 文と文を繋いで文章としてまとめることが苦手 など
そのため、相手に自分の意思や話したいことを上手に伝えられず、コミュニケーションが困難になります。 発症は乳幼児期とされていますが、前述のとおり言語の習得には個人差があることから、幼児期以降に診断されることが一般的です。成人期になっても継続する可能性があります。
4.社会的(語用論的)コミュニケーション障害
社会的コミュニケーション障害とは、社会生活において必要なコミュニケーションが困難な状態のことです。
社会的コミュニケーション障害とよく似た症状に「自閉スペクトラム症(ASD)」があります。両者の違いは、ASDに見られる「限定された興味・関心」や「反復的な行動(こだわり)」があるかどうかです。社会的コミュニケーション障害では、対人面の困難さはありますが、強いこだわり行動は見られないのが特徴です。
具体的には以下のような症状が見られます。
- 挨拶や報連相ができない
- TPOに合った話し方ができない
- 曖昧な表現への理解が困難
- 比喩やユーモアに対する理解力が乏しい(言われたことをそのままの意味で捉えてしまう) など
このように、社会的コミュニケーション障害の方は、他者とのコミュニケーションにおけるルールへの理解や、非言語の部分(相手の表情・声色など)での状況判断が難しいとされています。
5.特定不能のコミュニケーション障害
特定不能のコミュニケーション障害とは、「上記4つのいずれの診断基準にも当てはまらないが、コミュニケーション能力に支障がある」という状態です。学校や仕事など社会生活に影響が出ることも多いです。 自分で判断するのは難しいため、専門家に診断してもらうとよいでしょう。
コミュニケーション障害の原因として考えられること

コミュニケーション障害の原因は多岐にわたり、単一の要因でないことも多いです。主な要因として、脳機能の問題、遺伝的要因、環境的要因などが複雑に絡み合っていると考えられています。
発達の偏り・脳機能の特徴による原因
脳の情報を処理する部分や、言語をつかさどる部分の発達の偏りが原因となる場合があります。これにより、音韻の処理や状況判断が苦手になることがあります。
環境要因・心理的要因による影響
強いストレスやプレッシャー、トラウマなどが引き金となり、吃音などの症状が悪化したり、場面緘黙(特定の場所で話せなくなる)のような状態になったりすることがあります。
脳疾患やけが・病気による後天的な原因
事故による脳の外傷や、脳梗塞・脳出血などの病気の後遺症として、言語障害や高次脳機能障害が生じ、コミュニケーションに支障が出ることがあります(失語症など)。
遺伝との関係と家族内でのとらえ方
コミュニケーション障害の原因ははっきりと解明されていませんが、吃音や発達障害などは遺伝が一因なのではと考えられています。ただし、親の育て方が直接的な原因ではないため、家族が自分を責める必要はありません。
よくある誤解と原因を決めつけないための考え方
「親の愛情不足」「本人の努力不足」「しつけの問題」といった誤解を持たれることがありますが、これらは医学的根拠のない偏見です。原因を一つに決めつけるのではなく、本人の特性を理解し、環境を整えることが重要です。
コミュニケーション障害かなと思ったときのセルフチェック

自分や家族が「もしかして?」と思ったときに確認したい視点です。※正式な診断は医師にご相談ください。
子どものコミュニケーションのセルフチェックの観点
- 言葉が出るのが遅い、単語が増えない
- 名前を呼んでも振り向かない、目が合わない
- 一方的に話し続け、会話のキャッチボールができない
- 言葉が詰まる、繰り返すことが多い
大人のコミュニケーションのセルフチェックの観点
- 職場で指示を誤解することが多い
- 「何を言っているかわからない」とよく言われる
- 電話対応や雑談が極度のストレス
- 暗黙のルールや社交辞令が理解できない
日常生活でできるコミュニケーションの工夫

家庭でできる声かけと環境づくりの工夫
- 短く具体的に:「ちゃんとして」ではなく「お皿を運んで」と具体的に伝えます。
- 視覚情報の活用:口頭だけでなく、メモや図を使って伝えると理解しやすくなる場合があります。
- 待つ姿勢:言葉に詰まっても、先回りして言わず、本人が話し終えるまでゆっくり待ちます。
学校や職場でできる配慮のお願いと伝え方
「耳からの情報処理が苦手なので、指示はメールかチャットでお願いします」「緊張すると言葉が出にくくなるので、少し待っていただけると助かります」など、自分の特性と具体的な対処法を周囲に伝えておくと、誤解を防ぎやすくなります。
一人でも取り組めるコミュニケーショントレーニングの例
- 想定問答の準備:よく聞かれる質問への回答をあらかじめテンプレート化しておく。
- リラクゼーション:呼吸法などで身体の緊張をほぐし、話しやすい状態を作る。
コミュニケーション障害の方に向いている仕事

コミュニケーション障害では、仕事でも周囲の人々との意思疎通に支障が出やすいでしょう。そのため、人と関わることが少ない・マニュアルがあるルーティン作業・自分の裁量で進められるといった仕事がおすすめです。
仕事選びで意識したいポイント
- 対人折衝の少なさ:営業や接客よりも、事務、データ入力、清掃、工場での軽作業など。
- マニュアルの有無:臨機応変な対応よりも、決まった手順通りに進める仕事。
- 専門性:プログラミングやデザインなど、スキルを活かして一人で没頭できる仕事。
働き方を工夫して続けやすくする方法
- リモートワーク:対面コミュニケーションのストレスを減らせる。
- 障害者雇用枠の検討:特性に配慮を得ながら働くことができる。
- 就労支援の活用:ジョブコーチなどのサポートを受ける。
例として、請求書の作成・勤怠チェック・給与計算などの事務職などは、ルーティン化しやすく、マニュアルに沿って進められるため向いている可能性があります。完全テレワークやハイブリッドワークが可能な職場であれば、対人ストレスをさらに軽減できるでしょう。
どこに相談すればよいか

子どもの場合に相談できる機関
- 保健センター(1歳半健診、3歳児健診など)
- 児童発達支援センター
- 小児科、児童精神科
- ことばの教室(学校内)
大人の場合に相談できる医療機関・相談窓口
- 精神科、心療内科
- 発達障害者支援センター
- ハローワーク(専門援助部門)
- 障害者就業・生活支援センター
受診までの流れと費用の目安
まずは電話などで予約を取り、問診や検査を受けます。初診料や検査費用は保険適用で数千円〜1万円程度が一般的ですが、検査内容によって異なります。心理検査などは予約から実施まで時間がかかることもあります。
診断・障害者手帳・福祉サービスとの関係
医師の診断があれば、症状の程度によって「精神障害者保健福祉手帳」の申請が可能な場合があります。手帳を取得することで、障害者雇用枠での就職や、税金の控除、公共サービスの割引などの福祉サービスを受けられるようになります。
コミュニケーション障害と診断されても多様な職場で活躍の可能性がある!

コミュニケーション障害では他者との関わりに困難が生じてしまうため、仕事をするのは難しいと感じるかもしれません。しかし、決して諦める必要はなく、コミュニケーション障害をお持ちの方にも働きやすい職場はきっと見つかります。
例を挙げたように職種も多種多様なので、就職活動の際には支援サービスも利用しながら「今の自分」に適した仕事を探しましょう。 なお、今の職場を続けることに不安を感じている方や、これから自分に合った仕事を探したい方は、ぜひ一度DIエージェントにご相談ください。専任のキャリアアドバイザーが丁寧にご希望をうかがい、お一人おひとりに適切な働き方・職場を提案させていただきます。
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。






