ADHD(注意欠如・多動性障害)の方の中には、事務作業を苦手に感じる方も多くいます。本記事では、ADHDにおける代表的な特性や、事務作業の悩み、その対策方法をまとめて解説します。自分に合った働き方を見つける一助にしていただければ幸いです。
日々の業務の中で、気が散りやすい、何度も確認が必要などの悩みを抱えている方は少なくありません。しかし、本来は優れた集中力や発想力を発揮できる場面も多く、適切な工夫で苦手意識を和らげることが可能です。
この記事では、事務作業における不安やミスを減らす方法に加え、自分の強みを活かせる仕事の探し方もご紹介します。職場選びや転職活動の参考にしながら、無理なく実践できる対策を取り入れてみてください。
ADHDとは

まずはADHDに関する基本的な概要と、その代表的な特性について理解を深めましょう。
ADHDとは、発達障害の一種であり、不注意や多動性、衝動性の3つの特性を主体として持つことが特徴です。多くの方が自覚なく成長する一方で、社会に出てから仕事や人間関係の場面で特性による困りごとが表面化する場合があります。早めに自分の特性を知り、適切な対策を講じることが大切です。
具体的な症状や程度は人によって異なるため、同じADHDでも得意・不得意はさまざまです。例えば、事務作業のように細かいチェックや同時進行が求められる環境を苦手としやすい一方、興味のあることには驚くほど集中して取り組めるケースもあります。お互いの違いを知ることで、周囲からのサポートや自助を行いやすくなります。
ADHDは周囲の理解と本人の努力が合わさることで、働きやすい環境を整えることが可能です。完璧に職場の課題をゼロにするのは難しくても、得意分野やサポートを活かせれば、安定して仕事をこなす土台を築けます。
ADHDの3つの特性
ADHDの特性は大きく分けると、不注意、多動性、衝動性の3つです。不注意は細かいミスや物事を継続して集中することが難しいといった形で現れます。多動性は常に落ち着きなく動き回りやすい傾向を指し、衝動性は思いついたことを深く考えずに行動や発言をしてしまう特性を示します。
ADHDの方の長所・強み

ADHDの方ならではの優れた点、得意分野に目を向けることで、仕事で活かせる強みを見いだします。
ADHDの方はエネルギッシュで行動力があるケースが多く、興味や関心が向いた物事には集中力を発揮しやすいのが強みです。独創的なアイデアを提案したり、自由な発想で新しい取り組みを試したりといった面で、クリエイティブさを活かせることも少なくありません。
また、思いついたことを即行動に移せる点は、組織の中でひらめきを生かした企画提案や迅速な処理能力として評価される場合があります。苦手を補う環境が整えば、周囲のサポートと組み合わせて高いパフォーマンスを発揮できる可能性があります。特性をマイナスに捉えすぎず、ポジティブな面を伸ばす工夫が大切です。
自分の特性を理解し、工夫次第で活躍の幅を広げることを意識することで、事務作業などの苦手分野もカバーできるようになります。得意な面と組み合わせてバランスをとれば、チーム全体の力を底上げする存在にもなり得るでしょう。
ADHDの方は事務が苦手?仕事上で抱えやすい悩み

事務作業で特につまずきやすいポイントを整理し、その原因や背景を考察します。
事務仕事では、単純作業や細かな確認作業が長時間続くことが多いため、注意力が散漫になりがちなADHDの方には負担がかかりやすいです。タスクが多岐にわたり、同時進行や段取りが求められる職場では、混乱やミスが起こりやすくなってしまうことが少なくありません。
さらに、集中力が切れやすい場面や環境が整わない状態が続くと、一時的にパフォーマンスを下げ、それが自己評価を下げる要因になってしまうこともあります。苦手をシステムや周囲のサポートに任せるという柔軟な視点を持たないと、必要以上にストレスを抱えてしまいがちです。
対策をとることでミスや抜け漏れを軽減し、他の業務へ集中する余力を生み出すことは可能です。まずは自分がどのような場面で苦手と感じるのかを把握し、段取りやチェック体制を見直すといった取り組みから始めてみましょう。
記入漏れ・やり忘れなどのミスや忘れ物が多い
細かい記入が必要な書類作成などでは、うっかり何かを記入し忘れたり、提出を後回しにしすぎてしまうことがあります。これは、一度に複数のステップを踏むような作業を短期的な記憶だけで完結させようとするためです。タスクを一つひとつメモやチェックリストで確認するようにすると、こうしたミスを未然に防げる可能性が高まります。
マルチタスクをこなしづらい
複数の仕事を同時並行で進める必要があると、焦りや混乱に陥りやすくなります。その結果、進捗管理や優先順位づけがうまくいかなくなり、周りからは『仕事がうまく回せていない』という印象を与えてしまいます。シングルタスクに集中できる環境づくりや、こまめなタスクの再確認が大切です。
気が散る・落ち着きがないなど注意力が散漫
周囲の雑音や視覚的な刺激によって、注意力が一気に削がれることがあります。こまめに席を立ってしまう、必要以上に周囲の会話に反応してしまうなど、多動性も重なって周りからは『落ち着きがない』と思われがちです。できる限り集中できるスペースを確保したり、ノイズキャンセリングなどのツールを使うなど、環境面を整備する工夫が有効です。
整理整頓が上手にできない
デスク周りやPCのファイル整理が苦手で、必要な資料が見つからないことが多いと作業効率が下がってしまいます。どこに何を保管したのかを明確にしないと、思い出すために余計な時間をかけることになります。こまめに片付ける習慣や、場所を決めて収納するなどのシステム化が作業ストレスの低減につながります。
遅刻しやすい・スケジュール管理がうまくいかない
時間の見積もりがうまくできず、通勤や仕事の段取りに間に合わなくなるケースがあります。朝寝坊だけではなく、途中で別のことに気を取られ、思わぬ遠回りをしてしまうことも理由の一つです。スケジュールを余裕を持って組むほか、アラームでこまめに時間を区切るなどの対策でリスクを抑えられます。
思ったことをそのまま口に出してしまう
衝動性の特性から、相手の立場を考える前に思ったことを口にしてしまう場面があります。好意的に受け止められれば良いですが、言動が誤解を生み、人間関係に影響を与えるリスクがあります。自分が衝動的に発言しやすいことを認識し、発言前に数秒考える習慣をつけるだけでも、トラブルを減らすことが可能です。
ADHDの方が働く上でできる対策

ADHDの特性を理解しつつ、仕事を進めやすくするための具体的な方法を紹介します。
対策の基本は、ADHDの特性をネガティブに捉えるだけでなく、工夫次第でパフォーマンスを伸ばせる点に目を向けることです。メモやタスク管理を徹底するだけでなく、周囲と情報共有を密にすることでミスを未然に防ぐことができます。自分の苦手に直面するときは、見落としやすいポイントを把握し、システム的に補う手段を検討しましょう。
環境の調整やコミュニケーションの改善を図ることで、長所を存分に発揮できる土壌を作ることが重要となります。社会の中でより働きやすい場所を探すためにも、具体的な対策を理解し、継続できる形で取り入れましょう。
ここでは、すぐに使える対策をいくつか紹介します。個人差があるため、実践しながら自分に合った方法を選ぶことが大切です。
メモを取る・ToDoリストでタスクを管理する
頭の中だけでタスクを把握せず、必ずメモやToDoリストに書き出す習慣をつけることで、見落としや先延ばしを防ぎやすくなります。シンプルなリスト形式でも良いので、やるべきタスクの優先度と期限を記載しておくと効果的です。定期的にリストを更新し、完了したタスクは消し込むなど、達成感を得られる工夫もポイントです。
ゲームの要素を取り入れる
タスクに得点やレベルアップの概念を導入し、進捗に応じて小さな達成感を得られる仕組みを作る方法です。例えば、1つタスクを終わらせるごとに自分にご褒美を与えるなど、ゲーム感覚で工程を進めていくとモチベーションを保ちやすくなります。楽しみを持ちながら作業を続けることで、苦手意識を軽減する助けになります。
片付けのための時間を設ける
作業環境が散らかっていると、必要な資料を探すのに時間を取られ、集中が途切れてしまいがちです。1日の終わりや週の区切りなどに、あえて片付けをする時間をスケジュール化するのが効果的です。こまめに整理整頓する習慣をつければ、視覚的な情報に惑わされにくくなり、結果的に作業効率が向上します。
アラームなどで時間管理をする
作業に没頭すると時間感覚を見失いがちなため、スマートフォンやPCのアラーム機能を活用するのは有効です。稼働時間を区切って通知してくれるツールを使えば、タスクの切り替えや休憩のタイミングを見失わずに済みます。自分のリズムに合わせてアラームを設定し、無理なく続けられるペースを確立しましょう。
発言が誤解されやすいことを自覚し注意する
言いたいことが先走ってしまい、相手を傷つけたり誤解を招くケースがあるため、少し時間を置いてから言葉を選ぶことが重要です。特にビジネスの場では、やりとりが仕事の品質や信頼に直結するので、相手の立場を意識して発言する意識が欠かせません。意見がある場合は、メールやチャットなど文章化して伝えることで誤解が減る場合もあります。
困ったときは転職も検討を!ADHDの方に向いている仕事・働き方とは

苦手を避けるだけでなく、得意や興味関心を活かせる仕事を視野に入れることで活躍しやすくなる可能性があります。
事務作業に強い苦手意識を持っている場合は、仕事内容の少し違う職場や業種を探すのも一つの方法です。例えば、動き回ることが多い倉庫作業や、個々の専門スキルを生かせるクリエイティブ分野などなら、ADHDの特性をプラスに転じられる可能性があります。
転職を考える際は、自分がどのような環境や業務形態なら無理なく力を発揮できるかを整理してみましょう。周囲の理解が得られる職場や、タスク管理が明確に分担されているプロジェクト型の仕事など、適切なマッチングが進むとストレスは格段に減少します。
ADHDの方が転職活動で利用できる支援機関

ADHDを含む発達障害の方をサポートする、さまざまな公的・民間の支援機関を紹介します。
自分だけで解決策を探すのが難しい場合には、公的機関や専門の支援サービスを活用することも重要です。職や働き方に関する知識を持ったスタッフと一緒に進めることで、オープンに相談しにくい問題や苦手領域についても、具体的なアドバイスが得られやすくなります。
活用可能な支援機関は複数あり、内容によってサポート範囲が異なります。最初は相談しやすい機関を選び、必要に応じて複数の機関を併用すると良いでしょう。
ハローワーク
全国各地にある公的機関で、障害者雇用に特化した窓口も用意されています。求人情報の提供や面接対策など、就職活動の基礎からサポートを受けることができます。担当者にADHDの特性をしっかり伝えれば、適した仕事内容のアドバイスを受けやすくなるでしょう。
地域障害者職業センター
専門のカウンセラーによる職業相談や、職場への定着支援などよりきめ細かいサービスを受けられる施設です。個別に適性を見極め、就職後のフォローアップも実施してくれることが多く、安定的な就労を目指すうえで心強い味方になります。相談の予約をしてから訪問するとスムーズです。
引用元
【障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構】
https://www.jeed.go.jp/general/qa/disability/index.html
就労移行支援事業所
職業訓練や職場実習など、実際の仕事を体験しながらスキルを獲得するための支援を提供する事業所です。職場見学や体験実習を通じて、自分に合った現場かどうかを試せるメリットがあります。自己理解を深めるためのプログラムも行っているところが多く、苦手意識の改善に役立ちます。
障害者就業・生活支援センター
就業だけでなく、生活上の相談にも応じてくれる総合支援センターです。社会生活に関わる幅広い課題に対してアドバイスを行い、企業との連携を図るサポートも行います。仕事と生活面の両方を見直すことで、より安定した職場定着を目指せる点が特徴です。
引用元
【障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18012.html
【令和7年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001242595.pdf
障害者向け転職エージェント
企業と個人のマッチングを行う民間サービスで、障害に配慮した企業を紹介してもらえるのが魅力です。履歴書や面接対策など、専門のコンサルタントの指導が受けられるため、初めての転職活動でも心強い支援が期待できます。就職後のフォローも充実している場合が多く、トラブル時にも相談できる環境が整えられています。
ADHDの方も苦手なことを整理して働きやすい職場に出会おう

自分の苦手と得意を把握しながら、無理なく働ける環境を見つけるための考え方をまとめます。
現在の職場や業務内容に過度なストレスを感じている場合は、自分がどのポイントでつまずいているのかを具体的に整理してみることをおすすめします。客観的に苦手分野と得意分野を浮き彫りにすることで、転職や部署異動を検討する際に適切な判断がしやすくなります。
また、サポート体制の整った職場を選ぶことで、得意な部分を最大限に発揮できる可能性が高まります。周囲とのコミュニケーションを取りやすい風土や、タスク管理の仕組みが充実している企業では、ADHDの特性を前向きに生かしやすくなります。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。






