ADHD(注意欠如・多動性障害)の症状を徹底解説!セルフケアとサポートのポイント

ADHD(注意欠如・多動性障害)は、不注意、多動性、衝動性といった行動面の特徴がみられる発達障害のひとつです。幼少期から症状が現れるケースが多い一方で、大人になってから診断される例も増えています。

本記事では、ADHDの定義や症状、原因や治療・支援内容などを総合的に解説し、周囲ができるサポートやセルフケアのポイントについても詳しく紹介します。

正しい理解と適切な対策によって、ADHDがある方や周囲の人も、生きづらさを軽減しながらより良い生活を築くことが可能です

ADHDとは?定義と特徴を知る

ADHDとは?定義と特徴を知る

まずはADHDの基本的な定義やどのような特徴があるのかを理解しておきましょう。

ADHDはAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、日本語では注意欠如・多動性障害と呼ばれます。神経発達症の一種とされ、脳の働きや神経伝達物質の偏りが関係していると考えられています。主な特徴として、不注意、多動性、衝動性の3つが挙げられ、それぞれが強く出るか、複合的に現れるかによって個人差が生まれます。

ADHDを持つ子どもは、授業中に集中力が続かない、またはじっと座っていられないといった行動を取ることが多く見られます。一方、大人になってから初めて「ミスが多い」「計画を立てるのが苦手」という面を指摘され、受診して診断されるケースも珍しくありません。こうした特性は、単なる性格や努力不足と混同されがちなため、周囲の理解が欠かせません。

ADHDの疑いがあっても、本人や家族が対処法を知ることにより、不便を軽減できることがあります。正確な情報を得ることで、自分自身や周りの人々にとって適切なサポートや環境調整が見つかるかもしれません。

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ADHDの主な症状を理解する

ADHDには大きく分けて、不注意、多動性、衝動性の3つの特徴があります。

不注意は、集中力が続かない、細部に注意を払えないといった特徴が典型的です。時間管理が苦手で締め切りを遅れがちになるなど、仕事や学業において困難を感じる場面が多くなります。自分なりに努力していても、情報をすぐに忘れてしまったり、優先順位を立てづらかったりするのが特徴です。

多動性には、身体を動かさずにいられない、じっとしていることにストレスを感じるなどの行動面の特徴が見られます。幼児期は特に顕著になり、教室で席を離れたり、人の話を最後まで聞かずに動いてしまったりすることが少なくありません。大人になると少し落ち着く場合もありますが、心の中で常にそわそわした感覚が残る方もいます。

衝動性は、思いついたら即行動してしまう、感情のコントロールが苦手になるなどの傾向が強まります。特に、会話の途中で割り込んで話し始めたり、後先を考えずに衝動買いをしてしまったりすることが多く見られます。自分自身でも戸惑いを感じる一方、周囲に誤解を与えやすい側面があるため注意が必要です。

不注意の具体例

不注意の具体例

日常生活の中で見られる不注意の行動例を把握することで、対策を取りやすくなります。

不注意が顕著な方は、重要な書類や鍵などをどこに置いたのか思い出せず、探し物に費やす時間が長くなるケースがあります。簡単な作業中でも頻繁に集中が途切れやすく、小さなミスや見落としが続くことが多いのです。こうしたミスの多発は、自信の低下につながりやすいという点にも気を配る必要があります。

同時に複数のことを進めるのが苦手で、優先順位を考えて計画的に行動することが難しく感じられます。例えば、期限のある作業を後回しにしてしまったり、本来すべき作業とは関係のないことに気を取られたりする場面が見受けられます。こうした場面をなるべく減らすためには、タスクを書き出して視覚化するなどの方法が有効です。

また、人の名前や約束の時間をすぐに忘れてしまうといった面から、人間関係に摩擦が生じることもあります。うっかり忘れによる遅刻や失念は、周囲からは当人の怠慢と受け止められてしまうリスクがあるため、注意が必要です。不注意の特性を自覚し、ツールを使ったり周囲にこまめに確認を取ったりする工夫でミスを減らすことが可能です

多動性の具体例

多動性が目立つ方は、授業中や会議中でも落ち着きなく、席についていられないという特徴があります。特に子どもの場合、体が勝手に動いてしまう感覚や、短い時間でさえ静かにしていることが苦痛になりやすいです。

大人になっても、座り仕事が苦手で長時間同じ姿勢を維持するのが困難という場面が多くあります。意識せずに貧乏ゆすりをしたり、ペンや小物を触り続けたりするなど、小刻みな動作がやめられないことも挙げられます。

多動性の背景には、脳の刺激を求める傾向があるとも指摘されています。何かに集中するときに体を動かすことで落ち着くという人もおり、単純にマナーの問題だけで片づけるべきではないと考えられます。

衝動性の具体例

衝動性が強い場合、思いつくとすぐ行動に移してしまうため、後で後悔することが少なくありません。例えば、買い物で必要以上に商品を購入してしまう衝動買いや、発言を抑えられずに場を乱してしまうなどの場面が考えられます。

会話中に相手の話をさえぎってしまったり、思ったことをそのまま口に出してしまったりするのも、衝動性が原因になることがあります。本人には悪気がないものの、周囲からは配慮に欠けると見られてしまう可能性もあります。

衝動性をコントロールするには、自分の衝動を客観的にとらえる習慣作りが重要です。短い間呼吸を整えたり、発言前に一呼吸おいたりすることで衝動を緩和できる場合もあります。こうした工夫は、社会生活を円滑に送るうえで非常に有効です。

子どもと大人のADHDの違い

子どもと大人のADHDの違い

成長段階での環境や求められる役割の違いによって、症状の現れ方や課題も異なります。

子どものADHDでは、学校生活での集団行動や学業成績に影響が出やすいのが特徴です。授業中に注意が散漫になったり、落ち着きなく教室を歩き回ったりすることで周囲に指摘されやすいため、早期に気づかれやすい側面があります。

一方、大人のADHDでは、多動性の症状がやや目立ちにくくなる傾向がありますが、職場での業務や家庭環境での役割が増えるため不注意や衝動性がトラブルの原因になることが多いです。締め切りを守れない、会議で余計な発言をしてしまうなど、社会生活上での困難が顕在化しやすくなります。

子どものうちに適切な支援を受けたり、特性を理解したりしている場合は、大人になってからの二次的なトラブルを減らせるケースもあります。逆に、大人になってから初めてADHDを認識し対策を始める場合でも、必要な理解と方法を得られれば十分に生活を改善できる可能性があります

ADHDの原因と考えられる要因

ADHDがどのように引き起こされるのか、脳の構造や遺伝要因など、現在分かっている範囲で解説します。

現在の研究では、ADHDの原因として脳の前頭前野部分の機能調節の偏りや神経伝達物質(ドーパミンなど)の不足が関与しているとされています。この神経伝達物質のバランスが崩れると、集中力や感情制御がうまくいかなくなる可能性が高まります。

一方で、遺伝的要因も大きく、家族にADHDの方がいる場合は発症リスクが高まることが報告されています。とはいえ、環境要因や育て方だけが原因というわけではなく、複数の要素が相互に作用して症状が現れると考えられています。

どのような形でADHDの症状が出るかは個人差が大きく、遺伝子や脳の発達、周囲の環境などさまざまな要素が重なり合っています。原因を正確に突き止めることは難しいですが、症状のメカニズムが理解できれば、より適切な支援や治療方法へとつなげられます。

ADHDで起こりやすい二次障害

ADHDに伴って生じやすい不安障害やうつ病などの二次障害リスクについて理解しておきましょう。

ADHDの特性により日常的に失敗や叱責を受ける機会が増えると、自尊心が傷つきやすくなります。その結果、自己肯定感が低下し、不安やうつなどの精神的な問題につながることがあります。

また、人間関係でのトラブルや学業・仕事上の挫折が続くと、無力感や焦りが蓄積しやすくなります。これが長期間続くと、不眠や食欲不振といった身体症状を伴う場合もあります。

二次障害を予防するには、早期にADHDの特性を理解し、環境調整や治療を組み合わせて自己肯定感を保つことが大切です。周囲の支援と適切な医療介入により、悩みの連鎖を断ち切る可能性は十分にあります。

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セルフケアと周囲のサポートがより良い生活への鍵

セルフケアと周囲のサポートがより良い生活への鍵

ADHDを持つ方に対し、周囲がおこなえる具体的なサポートや、本人が取り入れられるセルフケア法を解説します。

周囲の方は、本人のADHDの特性を理解し、「わざと」や「努力不足」ではないことを前提に接する姿勢が大切です。話し合いを通じて情報を共有し、本人がミスをしやすい場面や、得意とする活動などを把握することで、適切なサポートにつなげやすくなります。

家庭や職場では、作業手順を視覚化したり、やるべきタスクをリストアップしたりするなど、混乱を減らす工夫が有効です。本人からすれば、指示が明確であったり、スケジュールが見えやすかったりするだけでも随分と取り組みやすさが変わります。

セルフケアとしては、定期的な運動や十分な睡眠を確保して、自己管理能力を高めることが大切です。あわせて、日常での小さな成功体験を積み上げていくと、自己肯定感の向上にもつながります

本記事で取り上げた症状の特徴や対処法を参考に、自身や大切な人が抱える困難に対して、前向きに取り組んでみてください。ADHDとともにより良い生活を築くためには、情報を共有し、適切なサポートとセルフケアを重ねることが重要です。

監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。