双極性障害を患った方は障害者手帳を取得できるのか、また、取得にデメリットはないのか、気になる方も多いことでしょう。そこで、取得できる障害者手帳の種類や、取得するメリット・デメリットについて解説していきます。
また、双極性障害の既往歴がある方が転職活動を行う際にサポートしてくれるサービスも紹介するので、仕事探しの際に活用してみてはいかがでしょうか。
精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳は障害者手帳の1種で、所持者に一定以上の精神的な疾患があり、日常生活や社会生活に支障が生じていることを認めるものです。公的な証明書で、各自治体で発行されています。
なお、障害者手帳には、ほかに「身体障害者手帳」（身体障害対象）と「療育手帳」（知的障害対象）があります。
引用元
愛の手帳Q＆A｜東京都心身障害者福祉センター
愛の手帳 （療育手帳） の交付｜横浜市
双極性障害で精神障害者保健福祉手帳は取得できる？手帳の対象者とは
精神障害者保健福祉手帳は、統合失調症・気分障害・てんかん・発達障害などの疾患が対象です。双極性障害は気分障害の1種なので、精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。
そこで、精神障害者保健福祉手帳の等級や判定基準について詳しく見ていきましょう。
引用元
精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について｜厚生労働省
精神障害者保健福祉手帳の等級
精神障害者保健福祉手帳の等級には、1～3級があります。1級が最も重度で3級が最も軽度です。級に応じて受けられるサービスに違いがあることがあるので、利用する予定のサービスがある場合は事前に確認をしましょう。
等級の判定基準
等級は、対象者の障害の度合いを鑑み、医師の診断書をもとに、下記のような基準に基づいて総合的に判定されます。自治体ごとに精神保健福祉センターが審査を行って決まりますが、非常に複雑とされているのも事実です。
双極性障害では1級と認定されるケースは非常にまれであるとされ、2級または3級の判断が下ることが多いでしょう。
精神疾患の状態
精神疾患（機能障害）の状態によって判定される部分です。
気分障害では、1級は「高度の気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、かつ、これらが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするもの」、2級は「気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、かつ、これらが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするもの」、3級は「気分、意欲・行動及び思考の障害の病相期があり、その症状は著しくはないが、これを持続したり、ひんぱんに繰り返すもの」と定義されています。
能力障害の状態
能力障害（活動制限）の状態によって判定される部分です。
1級は「調和のとれた適切な食事摂取ができない」「洗面、入浴、更衣、清掃等の身辺の清潔保持ができない」「社会情勢や趣味・娯楽に関心がなく、文化的社会的活動に参加できない」などの8つの項目のうち、複数に該当するケースとされています。
2級は、同様の活動などを周囲からの援助なしには行えないというのが複数当てはまるケース、3級は、自発的に行えるものの援助は必要というケースです。
双極性障害の方が精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット
ここでは、双極性障害の方が精神障害者保健福祉手帳を持つメリットを解説します。
1. 税金の控除を受けられる
まず、所得税や相続税などの控除がある点です。所得税は27万円（特別障害者の場合40万円）の控除を受けられます。また、障害者を扶養している方も所得税控除の対象です。
相続税は、85歳になるまで1年につき10万円（特別障害者は20万円）が差し引かれます。そのほか、該当する場合に非課税措置を受けられることもあるので、詳しくは役所などで相談してみてください。
引用元
障害者と税｜国税庁
2. 運賃や各種料金などの割引を受けられる
障害者手帳があると、電車やバスなどの運賃・携帯電話料金・施設の入場料や利用料などの割引を受けられるケースもあります。特に、通院や通勤などで公共交通機関での移動が多い場合、運賃が半額などになると経済的に助かるでしょう。
利用料金などが割引や無料になるサービスも多数あるので、ぜひ必要に応じて活用しましょう。
3. 障害者雇用枠に応募できる
精神障害者保健福祉手帳を持っていると、「障害者雇用枠」と呼ばれる、障害者手帳をお持ちの方向けの求人枠への応募が可能です。
障害者枠ではなくても問題なく働ける方もいるかもしれませんが、度合いや体調などによって周りからのサポートが必要になることもあるでしょう。
そこで、障害者枠で就職すると、労働条件や業務内容、勤務時間などに関して適切な配慮を受けながら働けるようになります。
精神障害者保健福祉手帳を持つデメリットはある？
自分から言わなければ、精神障害者保健福祉手帳を持っていることが周りに知られる（バレる）ことはなく、手帳を持つことにデメリットというほどの大きなマイナスはありません。ただ、注意しておきたい点はあるので、下記で2つの点について解説します。
時間や医療費などがかかる
精神障害者保健福祉手帳は、対象疾患の初診日から6ヶ月以上経たないと申請できません。そのため、双極性障害と診断されてもすぐに手帳を発行してもらえるわけではない、ということを頭に入れておきましょう。
また、申請してから交付されるまでに4ヶ月ほどかかることがあります。さらに、手帳の発行自体は無料ですが、それまでの診察代や、医師に診断書を書いてもらう費用が必要です。
2年に1回更新が必要
有効期限が2年なので、引き続き所有したい場合は更新のための手続きをしなければならないことにも注意しましょう。更新時も発行までに時間がかかるため、更新できるようになったらすぐに手続きをするとよいでしょう。
双極性障害の方が精神障害者保健福祉手帳を申請するときの流れ
ここからは、精神障害者保健福祉手帳の申請方法・流れを押さえていきましょう。
1. 障害福祉の担当窓口で申請書をもらう
はじめに、お住まいの自治体の障害福祉窓口で申請書の用紙をもらってきます。あわせて、申請時に何が必要なのかも確認してください。
2. 医師に診断書を書いてもらう
次に、主治医から診断書を書いてもらいます。医師の診断が手帳の交付を受けられるかどうかや等級を左右する可能性があるため、状態をしっかり伝えることが重要です。
3. 申請書と必要なものを揃えて窓口に提出する
必要なものを提出し、自治体の窓口に正式に申請します。自治体によっては、診断書の作成日から3ヶ月以内などの決まりがあるため注意しましょう。症状が重く本人が行けない場合は代理人が行ってもかまいません。
申請書以外に何が必要？
申請書のほかに必要なのは、一般的には診断書・写真・マイナンバーがわかるものとされています。代理人が届け出る場合は、委任状や代理人の身分証明書も必要です。前述したように、窓口で確認しておくとよいでしょう。
更新時はどうすればいい？
提出するものはおおむね初回と同じです。ただし、今持っている手帳の写しも必要になります。期限の3ヶ月前から手続きできるので、早めに行ってください。
双極性障害で障害者手帳をお持ちの方が応募できる求人例
つづいて、双極性障害で精神障害者保健福祉手帳を所持している方が応募できる求人にはどんなものがあるのか、求人サイト「BABナビ」での例を挙げます。
株式会社マイナビパートナーズ 東京本社 ｜一般事務
マイナビグループの特例子会社で一般事務の募集です。適性や能力に合わせた事務業務（郵便物の仕分け・書類整理・データ入力など）を担います。一部テレワークも可能です（要相談）。
月給213,237円～244,098円（月13時間の固定残業代含む）、賞与が年2回あり、想定年収は298万円～336万円とされています。WordやExcelのスキルをお持ちの方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
引用元
株式会社マイナビパートナーズ 東京本社の求人（ID：1613）
双極性障害の方の仕事探しをサポートしてくれる機関
最後に、双極性障害の方が精神障害者保健福祉手帳を取得したのち、就職・転職の相談に乗ってくれたり、活動を支援してくれたりするサービスを紹介します。
ハローワーク
ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。
ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。
一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構（JEED）」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。
センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。
障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。
引用元
障害者雇用関係のご質問と回答｜高齢・障害・求職者雇用支援機構
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。
利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。
全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。
なかぽつは、全国に337カ所（令和5年8月22日時点）設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。
障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。
引用元
障害者就業・生活支援センターについて｜厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 （計 337センター）｜厚生労働省
障害者向け転職エージェント
障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。
障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。
高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。
就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。
双極性障害の方も障害者手帳を保有できる！必要に応じて取得しよう
双極性障害の方は、3種類ある障害者手帳のうち「精神障害者保健福祉手帳」を取得できる可能性があります。手帳を持つと特に経済的なメリットが多いため、体調を考慮しつつ、状況に応じて取得を検討してみてください。
また、病気によって今の仕事を続けるのが難しい場合は、配慮を受けながら働ける職場に転職するのもよいでしょう。転職はまだ検討段階という方も、ぜひ一度「DIエージェント」にご相談ください。
DIエージェントは障害者の方向けの就職・転職支援を行っており、専任のキャリアアドバイザーが求職者の方にヒアリングを行った上で、ご本人の希望・適性・スキルに見合う求人のご提案や、就職活動全般のサポートを実施しています。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D＆Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。
