ADHDはタスク管理やスケジュール管理が苦手で、締め切りを守れず、仕事でトラブルを抱えてしまうことも多々あります。
ルーズな印象を持たれ、周囲からの評価が下がることで、職場に居づらくなってしまったというケースも少なくありません。
そこで本記事では、タスク管理がしやすく、予定やタスクが抜け漏れしないためのテクニックを紹介します。
ADHDとは?その特徴やタスク管理が苦手な理由
ADHDとは、注意欠如多動性障害と呼ばれる発達障害の一つです。気が散りやすい、うっかりしやすいなどの特徴があり、タスク管理が特に苦手とされています。
目の前の関心事に集中して高いパフォーマンスを出せることもある一方で、他のことを忘れてしまうことも多いのが特徴です。そのため、タスクの実行漏れやスケジュール忘れ、ギリギリまでタスクを放置するなどのトラブルが発生します。
また、視覚化していないものは存在を忘れてしまうことが多く、せっかくタスク管理ツールを導入しても、入力を忘れて使いこなせないことも少なくありません。
1.他のことに興味や関心が移ってしまう
ADHDの方は、新しい刺激に敏感で興味や関心が移りやすい特性があります。そのため、一つのタスクに取り組んでいても、別の興味深い情報や作業に気を取られてしまい、元のタスクが中途半端なまま放置されることがあります。
また、次に処理すべきタスクがあっても、目の前の興味のある作業に没頭してしまい、重要な締め切りを逃してしまうこともあります。このような特性により、計画的なタスク管理が困難になり、業務効率の低下につながることがあります。
2.優先順位を付けるのが苦手
ADHDの方は、タスクの緊急性や重要性を客観的に判断することが難しく、優先順位付けに苦労することが多いです。
目の前にある作業から順番に着手してしまう傾向があり、長期的なプロジェクトや重要度の高いタスクが後回しになってしまいます。
また、複数の締め切りが重なった際に、どのタスクから着手すべきか判断できず、結果として全てのタスクが遅延してしまうというケースも少なくありません。
3.過集中によってスケジュールを忘れてしまう
ADHDの特徴の一つである「ハイパーフォーカス」によって、興味のある作業に没頭すると周囲の状況が見えなくなってしまいます。
会議の時間や他の約束事を完全に忘れてしまい、重要なスケジュールに遅刻したり、他のチームメンバーを待たせたりしてしまうことがあります。
この過度な集中は高い生産性をもたらすこともありますが、計画的な時間管理を困難にする要因にもなっています。
4.先延ばし癖によってタスクの処理が間に合わなくなる
不得意な作業や複雑なタスクに対して「後でやろう」という思考が働き、着手を先延ばしにしてしまいます。
その結果、締め切り直前になって慌てて作業を始めることになり、十分な時間が確保できずにクオリティの低下や締め切り超過を引き起こしてしまいます。
この悪循環により、仕事への自信を失ったり、周囲からの信頼を損なったりすることもあります。
5.時間管理や時間の見積が下手
作業にかかる時間を過小評価してしまう傾向があり、「これくらいならすぐ終わる」と思っていた作業が予想以上に時間がかかってしまうことが多いです。また、作業の途中で予期せぬ問題が発生した際の対応時間も考慮できておらず、結果として後続のタスクにも影響が及んでしまいます。このような時間管理の困難さは、日々の業務効率を下げる大きな要因となっています。
ADHDが仕事上で特に困りやすい特徴
ADHDの方が職場で直面する困難は、主に注意力・集中力の問題に起因します。長時間の集中を要する業務では疲労が蓄積しやすく、細かいミスが発生しやすい傾向があります。
また、オフィスの雑音や同僚の会話など、周囲の刺激に気を取られやすいため、作業効率が低下してしまいます。
計画性や時間管理の面では、複数のタスクを同時に進行させることや、締め切りの管理に困難を感じることが多いです。優先順位の判断が難しく、重要な業務が後回しになってしまうこともあります。
さらに、衝動性や多動性の特徴により、思いついたことをすぐに口に出してしまったり、長時間席に座っていることが困難だったりします。このような特性は、職場での人間関係に影響を与えることもあり、慎重な判断や静的な作業において特に課題といえるでしょう。
ADHDにおすすめ!処理忘れがなくなる4つのタスク管理方法
ADHDの方に効果的なタスク管理方法は、「可視化」がキーワードとなります。視認していないスケジュールやタスクは記憶から抜け落ちやすい特性があるため、常に目に見える形で管理することが重要です。以下では、具体的な管理方法を詳しく解説します。
1.ToDoリストやToDoアプリを活用する
日常的なタスク管理には、紙のノートやホワイトボードを活用したToDoリストが効果的です。また、デジタルツールを活用する場合は、パソコンのデスクトップに常時表示されるToDoアプリや、スマートフォンと連携して通知を受け取れるアプリが有用です。
特にGoogleのToDoリストのように、複数のデバイスで同期できるツールを使用することで、場所を問わずタスクの確認や更新が可能になります。
2.付箋を使って見える場所に貼っておく
最も直接的な可視化方法として、付箋を活用する方法があります。パソコンのディスプレイやデスクなど、常に視界に入る場所に付箋を貼ることで、重要なタスクを見落とすリスクを低減できます。
特に締め切りが迫っている緊急性の高いタスクや、絶対に忘れてはいけない重要な予定を管理する際に効果を発揮します。
3.定期的なルーチンワークはタイマーやカレンダーアプリで繰り返し設定をする
毎日決まった時間に行うべき作業や、週単位、月単位で発生する定期的なタスクは、自動通知の設定が有効です。
日々のルーチンワークにはタイマーを、より長期的な予定にはカレンダーアプリを活用し、事前通知を設定することで、タスクの実行漏れを防ぐことができます。リマインダー機能を効果的に使用することで、安定した業務遂行が可能になります。
4.ルーチンワークや定型文はマクロを作っておく
頻繁に発生する定型的な業務については、作業手順をマクロ化しておくことで、タスク管理の負担を軽減できます。
よく使用する文章のテンプレートをファイルにまとめたり、作業手順書を作成したりすることで、業務の効率化が図れます。
これにより、作業開始時の心理的なハードルを下げ、スムーズなタスク処理が可能になります。
ADHDの方がタスク管理に失敗しない4つのポイント
ADHDの方の中には、様々なタスク管理ツールを試してみても上手く活用できず、苦手意識を持ってしまう方も少なくありません。
タスク管理の失敗経験が重なると、自己肯定感の低下にもつながりかねません。以下では、タスク管理を成功に導くための重要なポイントを解説します。
1.仕事を始める前に必ずタスク確認の時間を取る
業務開始時や休憩後の作業再開時には、必ず5分程度のタスク確認時間を設けることが重要です。直近の締め切りを確認し、緊急性の高いタスクと余裕のあるタスクを区別することで、効率的な業務遂行が可能になります。
この短時間の確認習慣により、一日の業務の見通しが立ちやすくなり、計画的な作業が可能になります。
2.タスク処理には、「できそう」と思う2倍の時間を想定する
ADHDの特性として、作業時間の見積もりが楽観的になりがちです。理想的な状況下での所要時間を基準にしてしまうため、実際の業務では時間が不足してしまうことが多くなります。
急な割り込み業務や予期せぬトラブル、集中力の変動なども考慮し、余裕を持った時間設定をすることで、締め切りに余裕を持って対応できるようになります。
3.タイマーを厳守して必ず動く
タイマーによる時間管理を行う場合、アラームが鳴っても「もう少しだけ」と作業を続けてしまいがちです。しかし、この小さな判断の積み重ねが、後のタスク処理に大きな影響を及ぼします。
タイマーが鳴ったら即座に手を止め、次の作業に移るという習慣を徹底することで、計画的なタスク管理が可能になります。
4.「慣れ」が生じないように定期的にツールを変える
ADHDの方は、同じ管理方法を長期間継続すると、徐々に効果が薄れていく傾向があります。アラートやリマインダーを無視するようになったり、タスク管理ツールのチェックを怠るようになったりした場合は、新しい管理方法やツールに切り替えることで、効果を維持することができます。
ADHDの特性を理解してタスク管理をすることで、締め切り破りやど忘れを回避しよう!
ADHDの方は、時間やタスクの管理に困難を感じやすい特性があります。特に視覚的に認識できないものは記憶から抜け落ちやすいため、タスクは可能な限り目に見える形で管理することが重要です。
付箋やホワイトボードを活用した視覚的な管理方法を取り入れ、業務開始前のタスク確認を習慣化することで、効率的な業務遂行が可能になります。
自身の特性を理解し、それに合わせた管理方法を見つけることで、タスク管理の精度は必ず向上します。一つの方法にこだわらず、自分に合った方法を柔軟に取り入れながら、働きやすい環境を整えていきましょう。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。