うつ病で休職したら手当はもらえる?傷病手当金の申請方法やその他に利用できる制度を紹介

うつ病になった場合、休職する方も多いです。しかし、休職中に手当がもらえるかどうかが気になる方も多いのではないでしょうか。そこで、休職手当の概要や申請方法について理解を深めましょう。

また、休職手当以外にも多くの支援や制度があるため、必要な援助を受けながら療養することが大切です。回復後に転職する場合の仕事探しをサポートしてくれるサービスについてもお伝えします。

うつ病で休職手当はもらえる?

うつ病で休職手当はもらえる?

うつ病で一定期間仕事を休むことになった場合、休職手当はもらえるのか気になる方も多いことでしょう。

職場によって制度が異なるため、給料や手当が出るケースもあるほか、休職手当として「傷病手当金」をもらえる可能性があります。そこで、傷病手当金の概要や、受給するための条件を見てみましょう。

傷病手当金とは

「傷病手当金」は健康保険に加入している場合に適用される給付金制度で、病気やケガで仕事を休む際に被保険者と家族の生活を保障してくれるものです。ただし、休職中も職場から十分な報酬が出る場合、傷病手当金は支給されません。

また、支給される金額の計算方法にも規定があり、給料と同程度の金額をもらえるわけではないことに注意が必要です。

引用元
傷病手当金 | 全国健康保険協会

傷病手当金の受給条件

傷病手当金の給付を受けるためには、以下の4つの条件を満たしている必要があります。

  1. 業務外の理由による病気やケガである
  2. 仕事ができない状態である
  3. 連続する3日間を含み4日以上働けない
  4. 休業中に給料を受け取っていない

なお、給料が支払われていても傷病手当金の金額より少ない場合、差額を受給することが可能です。

引用元
病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金) | 全国健康保険協会

 
キャリアアドバイザー
「なお、傷病手当金の受給期間は最長で通算1年6ヶ月と定められています」

うつ病再発時には休職手当はどうなる?

うつ病は再発することもあります。最初にうつ病になって休職し、再度うつ病で休職することになった場合、前回の支給が1年6ヶ月に満たなかったケースでは、前回と同じうつ病として手当を再受給することが可能です。

ただし、受給期間は通算なので延長されないことには注意しましょう。また、前回すでに1年6ヶ月分を受給していた場合はもらえません。

しかし、例外として、前回のうつ病が「完治」したとみなされており一定期間経過していた場合は、新たな理由として再び1年6ヶ月まで受給できます。

うつ病で休職するときの流れ

うつ病で休職するときの流れ

つづいて、うつ病で休職する場合はどのような流れになるのかを見ていきましょう。

1. 医療機関で相談し、診断を受ける

うつ病で休職する場合、医師の診断書が必要です。うつ病が疑われる場合は、精神科や心療内科を受診してきちんと診断を受けましょう。診断書には、休職の必要性や休むべき期間、治療方針などが書かれており、傷病手当金の申請にも必要です。

医師とよく相談した上で、今後の治療計画も立てましょう。

2. 職場に休職の可否を確認する

日本では、病気で休職するのは労働者の権利として認められていますが、規定は会社ごとに異なるため、自分の職場に休職制度があるか・利用できるかを確認します。上司・人事部・産業医などに聞いてみましょう。

直接聞くのが難しい場合、就業規則にも載っているはずなので、確認してみてください。

3. 休職期間や給料について確認する

休職できる場合、休職可能な期間や休職中に給料がもらえるか、もらえる場合はどの程度なのかを確認しましょう。こちらも企業ごとに規定が異なります。

給料が出ない場合は、休職手当として傷病手当金を受け取れる可能性が高いので、あわせて聞いておくことが大切です。なお、傷病手当金の申請の流れは次の章で解説します。

4. 休職に必要な手続きをする

「休職願」「休職届」といった書類や医師の診断書など、会社に求められた休職手続きに必要なものを提出します。

また、休職中も社会保険料や住民税は発生するため、支払い方法を確認しておくことも重要です。会社が立て替えてくれ、休職者が復帰後に返す方法もあれば、傷病手当金を会社が受け取り、保険料などを差し引いて休職者に支給する方法もあります。

休職中の職場との連絡方法も確認しておこう

休職していても雇用関係は継続しているため、上司や人事部などと連絡を取れる状態にしておく必要があります。休職する前に、休んでいる間、誰と・どの手段で・どのくらいの頻度で連絡を取り合うかを決めておきましょう。

体調によっては計画通りにいかない場合もありますが、その点も含め、症状や医師の見解などを伝えた上で調整してみてください。

うつ病で休職するときの傷病手当金の申請方法

うつ病で休職するときの傷病手当金の申請方法

ここからは、うつ病を患って休職することになった場合の傷病手当金の申請の流れを解説していきます。

1. 健康保険傷病手当金支給申請書を入手する

はじめに、専用の申請書を職場や健康保険組合から受け取る、またはインターネットでダウンロードしましょう。

全国健康保険協会の加入者は、下記ページからダウンロードできます。
健康保険傷病手当金支給申請書|全国健康保険協会

2. 必要事項の記入・必要書類の準備をする

次に、入手した申請書に個人情報・病状・休職期間など、被保険者が記入すべき必要事項を記入しましょう。また、医師の診断書や休職を証明できる書類などを用意します。

3. 医師や職場に必要事項を記入してもらう

申請書には療養担当者や事業主が記入する箇所もあるので、医師や会社の担当者に記入してもらいます。

なお、療養担当者が記入するのは、申請者が「働けない状態である」ことを証明するための内容、事業主が記入するのは、会社側が「休業中に給料を支払わない」ことを証明するための内容です。

4. 健康保険協会に提出する

すべての書類が準備できたら、健康保険協会に郵送や持参など所定の方法で提出すれば手続きは完了です。会社側が提出してくれるケースもあれば、自分で提出しなければならないケースもあります。

うつ病で休職する方が傷病手当金以外に受けられる可能性のある支援や制度

うつ病で休職する方が傷病手当金以外に受けられる可能性のある支援や制度

うつ病で休職する場合、傷病手当金以外にも受けられる可能性がある支援・制度があります。どんなものがあるのかを押さえましょう。

労災保険

労災保険は、業務上の理由で病気やケガをした際に補償を受けられる保険です。職場でのハラスメントや過労、強いストレスなどが原因でうつ病になった場合、傷病手当金ではなく労災が適用されることも。(※傷病手当金は前述のように「業務以外の理由」の場合に適用)

労災に認定されれば、休業補償や治療費などを受け取れます。

自立支援医療

自立支援医療とは、精神的な疾患を軽減するために必要な医療を受ける際、医療費の自己負担額を減らせる制度です。うつ病では長期間の通院が必要になるケースが多く、医療費も大きくなりがちなため、制度を利用すると経済的な負担を軽減できるでしょう。

所得に応じて負担の上限が変わるもので、利用するためには自治体への申請が必要です。「障害福祉課」や「保健福祉課」といった福祉関係の窓口に問い合わせてみてください。

障害年金

うつ病が重症で一定の障害基準に該当する場合、障害年金をもらえる可能性もあります。初診日から1年6ヶ月後以降に受け取れるものなので、ちょうどうつ病の傷病手当金が終わる頃に申請ができるようになるはずです。

受給には所定の要件があり、申請したとしても必ずしももらえるとは限りませんが、うつ病での休職や不調が長引く場合は検討してみてはいかがでしょうか。

障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)

障害者手帳は、障害をお持ちの方の症状の程度に応じて発行される公的な手帳です。うつ病の場合、「精神障害者保健福祉手帳」を取得できる可能性があります。

1~3級の等級に分けられ、手帳を所持していることにより、税金の控除や交通機関・施設などの割引といった優遇を受けられます。結果的に経済的な負担を抑えられるため、状況に応じて取得を検討しましょう。

 
キャリアアドバイザー
「うつ病によって仕事ができない上、通院による負担もかかります。回復に向け、制度をうまく活用しましょう」

うつ病の方が休職後に転職したい場合に相談できる機関

うつ病の方が休職後に転職したい場合に相談できる機関

うつ病で休職したのちに復職する方もいますが、状況によっては復帰が難しいケースもあります。そこで、転職を考える場合には、相談に乗ってくれ、仕事探しをサポートしてくれる下記のようなサービスを利用するとよいでしょう。

ハローワーク

ハローワークとは、全国にある「公共職業安定所」のこと。窓口や施設に設置してある検索機で、全国の求人情報を調べることが可能です。

ハローワークには専門援助部門が設けられており、窓口には専門の相談員が配置され、障害をお持ちの方が就職活動をするための支援を行っています。

一般向けの求人から障害者枠の求人まで、求職者の状況と企業の募集内容を照らし合わせながら相談に乗ってくれ、障害のある方向けに就職面接会を行ったり、面接に同行したりといったサポート体制を整えていることが特徴です。

参考
障害のある皆様へ|ハローワークインターネットサービス

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」が運営しており、障害をお持ちの方に対して専門的な職業リハビリテーションを行う施設です。全都道府県に最低1カ所ずつ以上設置することが義務付けられています。

センターでは、直接就職先を紹介するという支援は行っていません。しかし、ハローワークと連携しながら、職業相談を受け付けたり、職種・労働条件・雇用状況などの求人情報を提供したりといった支援を実施しています。

障害者職業カウンセラー・相談支援専門員・ジョブコーチなどが配置されており、専門性の高い支援を受けられることが特徴です。

引用元
障害者雇用関係のご質問と回答|高齢・障害・求職者雇用支援機構

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害者の方に向けて、トレーニングと就職活動の支援を行うことで就労をサポートする福祉サービス。通所型の障害福祉サービスで、「障害者総合支援法」という法律のもとで運営されています。

利用者にとって、事業所に通いながら就職に必要な知識や技術を獲得でき、職場見学や実習などを行い、事業所職員のサポートを受けながら仕事を探せることがメリットです。

全国に3,300カ所以上あり、利用するためには市区町村で手続きをする必要があります。就職後の定着支援まで行ってくれる事業所もあり、安心して頼れるでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターとは、障害をお持ちの方の仕事面での自立を図るため、雇用や福祉などの関係機関と連携し、地域で仕事と生活面での一体的な支援を行う施設です。名称が長いため、間の「・」から「なかぽつ」「就ぽつ」などと呼ばれることもあります。

なかぽつは、全国に337カ所(令和5年8月22日時点)設置されています。社会福祉法人やNPO法人などが運営しており、厚生労働省のページにある一覧から、近くのセンターを探すことが可能です。

障害をお持ちの方への就職支援や助言のほか、事業所に対して障害者雇用に関する助言を行ったり、関係機関との連絡調整を実施したりしています。

引用元
障害者就業・生活支援センターについて|厚生労働省
令和6年度障害者就業・生活支援センター 一覧 (計 337センター)|厚生労働省

障害者向け転職エージェント

障害者枠を設けている企業や障害者雇用を推進する企業の求人に特化した、転職エージェントもぜひ利用してください。

障害者の方の就職活動におけるノウハウを持っており、高い専門知識も兼ね備えているので、初めての転職で不安を抱える方も心強いでしょう。そのエージェントしか取り扱っていない、非公開の求人情報を得られる場合もあります。

高い専門知識を持った専任のアドバイザーが、求職者の希望や障害の度合いなどをふまえた上でマッチングを行ってくれるのが特徴です。

就職前の準備から就職後の支援までしっかりサポートしてくれるため、自分の特性にマッチした仕事を見つけやすいというメリットがあります。

うつ病になったら休職手当をもらいながらじっくり静養しよう

うつ病になったら休職手当をもらいながらじっくり静養しよう

うつ病の方が休職する場合は傷病手当金という休職手当をもらえる可能性があります。職場の規定を確認し、もらえる場合はしっかり受け取って治療に専念しましょう。また、ほかにも活用できる制度があるので利用してみてください。

なお、うつ病後の職場復帰が難しい場合、もっと自分に合った環境に転職するのもよいでしょう。支援機関を利用しながら、自分らしく働ける職場を探しましょう。

DIエージェントでは、求職者の希望や適性などに応じた職業紹介やアドバイス、企業との調整などのサポートを行っているので、まずは気軽にご相談ください。

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監修:東郷 佑紀
大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。