うつ病を抱えながら働く人は年々増加傾向にあり、働く世代の多くが、日々強い不安やストレスを感じている状況です。これは氷山の一角ではなく、多くの方が「仕事を続けたい」という思いを持ちながらも、心を病み、仕事と治療の両立に悩んでいます。
実際、適切なケアや環境調整がないまま仕事を続けることで症状が悪化し、長期の休職や退職を余儀なくされるケースも少なくありません。
本記事では、うつ病と仕事の両立に向けて、具体的な対処法や利用できる制度、職場との関係づくり、転職をする場合の準備など、実践的なアドバイスをお伝えします。
うつ病の人が仕事を続ける場合の働き方とは?
うつ病の症状を抱えながら仕事を続けることは、心身に大きな負担がかかります。厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業または退職した労働者がいる事業所の割合は10.5%に上っています。
引用元
令和5年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況|厚生労働省
1.産業医やカウンセラー、上司と相談して労働環境の調整をする
うつ病の原因が仕事に関連している場合、環境を改善せずに仕事を続けることは症状の悪化につながります。
独立行政法人労働者健康安全機構の指針によると、産業医による定期的な面談と状態評価が重要とされています。
産業医による診断や、カウンセラーとの相談を通じて自分の状態を客観的に把握することが大切です。その上で、診断書を基に上司と具体的な労働環境の調整について相談を進めていきます。
引用元
治療と就労の両立支援マニュアル|独立行政法人 労働者健康安全機構
2.時短勤務やリモートワークに切り替えて貰う
通常の勤務形態では負担が大きい場合、リモートワークや時短勤務への切り替えを検討します。リモートワークでは通勤による身体的な疲労を軽減できるだけでなく、自宅という安心できる環境で業務に集中することができます。
また、時短勤務では午前中など体調の良い時間帯に効率的に働き、午後は治療や休養に充てることができます。このように勤務形態を変更することで、心身の負担を軽減しながら、自分のペースで仕事を進めることが可能になります。
特に症状の波がある場合は、体調に合わせた柔軟な働き方ができる環境を整えることが重要です。
3.うつ病になった原因を振り返り、再発予防の為に情報を整える
単に症状を改善するだけでなく、再発を防ぐことも重要です。ストレス要因の分析と対策は重で、職場の人間関係や業務内容、労働時間など、様々な要因が絡み合っている可能性があります。
これらの要因を特定し、必要な対策を講じることで、再発のリスクを低減することができます。
うつ病を治療しながら仕事を続けるときに気を付けたい7つのポイント
うつ病を治療しながら仕事をするとき、気をつけたいポイントがいくつかあります。悪化させないことはもちろん、治療をしながら職場ともバランスよく仕事を続けるために必要なことは少なくありません。
その中でも特に重要な7つのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
1.主治医の指示に従って、通院・服薬を継続する
うつ病の治療において、医師の指示に従った通院と服薬の継続は最も重要です。治療中断は再発リスクを大きく高めてしまうリスクがあります。
症状が改善してきたからといって自己判断で治療を中断したり、周囲の助言で投薬を止めたりすることは避けるべきです。
2.規則正しい生活リズムを保ち、休養を取る
心身の健康を取り戻すためには、規則正しい生活リズムの確立が不可欠です。生活リズムの乱れがうつ病の症状悪化と強い相関があるため、朝早く起きて夜は決まった時間に就寝し、三食をしっかりと摂取する習慣を作ることが大切です。
3.柔軟な勤務形態を選択する
心身への負担や通院の時間の負担を軽減するため、時短勤務や在宅勤務、フレックスタイム制など、柔軟な勤務形態の活用を検討しましょう。
現職に勤務形態が柔軟にできる制度がない場合、転職を検討する必要があります。
4.上司や同僚の理解を得てサポートして貰う
職場での理解とサポートは、仕事を継続する上で重要な要素となります。休職からの復帰において、職場における支援体制の構築は重要です。
現在の状態や必要な配慮について、上司や同僚に適切に伝えることで、業務の調整や急な休暇への対応など、柔軟な支援を受けやすくなります。
5.なによりも自分の回復を最優先にする
周囲への迷惑を過度に気にしたり、他人の評価を気にしすぎることは、回復の妨げとなります。過度な周囲への配慮が、うつ病の回復を遅らせる要因の一つになるケースは少なくありません。
まずは自分の健康回復を最優先事項として捉え、必要な休養や治療に専念することが大切です。
6.治療を焦らず、長期間かかるものだと割り切る
うつ病の回復には一般的に長期間を要します。職場復帰までの平均期間は6ヶ月以上とされており、個人差も大きいことが報告されています。
早く良くなりたいという焦りが症状を悪化させることもあるため、時間をかけてゆっくりと回復していくという意識を持つことが重要です。
7.どうしても辛いときは休職や転職を考える
仕事を継続しなければならないという強迫観念が、うつ病の症状を悪化させることがあります。適切な時期での休職判断が、最終的な職場復帰の成功率を高めるため、仕事を続けなければと思い、休めないと自分を追い込むことは逆効果です。
どうしても仕事が辛い場合は、休職制度を利用して療養に専念したり、転職を視野に入れることも検討しましょう。
うつ病で仕事を休むときに活用できる制度
厚生労働省が定める各種制度を活用することで、経済的な不安を軽減しながら療養に専念することができます。以下の制度について、詳しく解説します。
1.休職制度
休職制度は、療養に専念できる環境を提供する重要な制度です。法律によるさだめはないものの、期間は企業により異なりますが、一般的に勤続年数に応じて3ヶ月から1年半程度の期間が設定されています。
この間、雇用関係は継続され、就業規則に定められた条件に従って給与の一部が支給される場合もあります。
2.傷病手当金
傷病手当金は、療養中の生活を経済的に支える重要な制度です。支給額は直近12ヶ月の標準報酬月額を平均した額の3分の2相当額で、最長1年6ヶ月まで受給可能です。支給開始には、連続する3日間を含む4日以上の欠勤が条件となります。
3.労災保険
労働者災害補償保険法に基づく保険制度で、業務上のストレスや過重労働によってうつ病を発症した場合に適用されます。認定基準は厚生労働省が定めており、発症前おおむね6ヶ月間に、特別な出来事や一定の強度の精神的負荷が認められることが要件となっています。
うつ病で仕事を休むときの手順
休職を決意することは大きな決断ですが、手続きの進め方によってその後の治療や職場復帰に大きな影響を与えます。計画的に休職手続きを進めた方が、スムーズな職場復帰を実現できるでしょう。
ここでは、休職の申し出から実際の手続きまでの流れを、順を追って説明します。特に最初の一歩を踏み出すことに不安を感じる方も多いため、各段階での注意点も含めて解説していきます。
1.専門の医師に診断書を発行して貰う
産業医や精神科医から休職診断書を取得します。診断書には、具体的な症状や必要な療養期間、就業制限の内容などを明記してもらいます。
産業医による職場復帰の判断も重要になるため、産業医との連携を密に取るようにしましょう。産業医がいない場合、かかりつけの精神科医に休職する旨を相談してください。
2.上司と面談する
上司との面談を実施します。この際、現在の症状や治療の見通し、休職期間中の連絡方法などについて具体的に相談します。
必要に応じて、産業医や人事部門も同席した三者面談を行うことで、より確実な支援体制を構築することができます。
3.人事担当者や総務担当者と面談する
休職に関する実務的な手続きについて、人事部門との面談を行います。この際、給与や各種手当の取り扱い、社会保険の継続、復職プログラムの内容など、具体的な条件を確認しましょう。
この段階での相互の詳細な情報提供が、円滑な休職・復職につながります。
4.休職申請書や各種手当金の申請をする
必要書類を整えて申請を行います。この際、企業の就業規則に定められた期限を遵守することが重要です。
傷病手当金の申請は、医師の意見書と事業主の証明が必要となります。労災保険を申請する場合は、発症前6ヶ月間の労働時間や業務内容を詳細に記録した資料も必要となります。
うつ病でも仕事を続けたい場合は、働き方があう職場への転職も考えよう
現在の職場環境では十分な配慮を受けることが難しく、うつ病の回復が見込めない場合、新しい環境への転職を検討することも有効な選択肢となります。
特に、メンタルヘルスケアが充実している企業や、柔軟な働き方を提供する職場であれば、治療を継続しながらでも充実した職業生活を送ることが可能です。
このような転職を実現するためには、うつ病の方の転職に特化した専門的なサポートを受けることが重要です。DIエージェントでは、メンタルヘルスの状態に配慮した求人の紹介や、専門カウンセラーとの連携など、包括的な支援体制を整えています。
まずは無料相談から始めることで、自分に合った新しい働き方を見つけることができます。
就労継続のために職場環境を整えることは重要ですが、それが難しい場合は転職という選択肢も視野に入れることをお勧めします。
DIエージェントへの登録は簡単で、オンラインで完結します。うつ病と向き合いながら、より良い働き方を実現するための第一歩として、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。