仕事中に強い疲労感や気分の落ち込みを感じることはありませんか?突然の無気力感や、今まで楽しめていた趣味にも興味が持てなくなるなど、心身の変調を感じることがあるかもしれません。
このような症状は、うつのサインかもしれません。本記事では、うつの初期症状のチェックポイントや具体的な対処法について、わかりやすく解説していきます。早期発見・早期対応が回復への近道となりますので、ぜひ参考にしてください。
うつ病の代表的な初期症状
うつ病は現代社会において最も一般的な精神疾患の一つです。
心の不調は、心理面だけでなく、身体や行動にもさまざまな形で現れ、初期段階では一般的な体調不良と見分けがつきにくいことが特徴です。
「最近、なんとなく調子が悪い」「単なる疲れかな」と軽く考えがちですが、うつは悪化してからでは治療が長期化しやすい疾患です。
しかし一方で厚生労働省によると、適切な治療を受ければ、半数の人が6ヶ月程度で回復に向かうと報告されています。そのため、早期発見・早期治療がとても重要です。
引用元
自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて
うつ病は、適切に治療すれば治癒する疾病であると聞きましたが、どのような治療をするのでしょうか。また、働きながら治療をすることも可能でしょうか。|厚生労働省
うつ病の初期症状:身体症状
日常生活の中で、以下のような身体の不調が続く場合は、うつの初期症状の可能性があります。
うつの初期には、頭痛や肩こり、めまいが長引き、朝起きても疲労感が抜けない状態が続くことがあります。十分な休息を取っているつもりでも体が回復せず、仕事に支障をきたすほどの強い疲労感に悩まされることも少なくありません。
また、食欲不振や胃腸の不調が増え、体重が変動したり、栄養が不足しがちになったりします。消化機能の乱れにより、食事量が減少したり、食後に胃もたれや腹痛を感じやすくなったりすることもあります。
睡眠の質も大きく低下し、眠りが浅く熟睡感が得られないことが多くなります。その結果、日中の眠気や疲労感が強くなり、夜中に何度も目が覚めたり、朝早くに目が覚めて再び眠れなくなったりする症状が見られます。
うつ病の初期症状:精神的症状
気分の落ち込みや無気力感が続き、これまで楽しめていた趣味や好きなことにも興味を持てなくなります。「何をしても楽しくない」「やる気が起きない」という状態が慢性化し、自分を責めがちな傾向が強まっていきます。
また、イライラや焦り、不安などのネガティブな感情が増え、情緒が不安定になりやすくなります。
通常なら気にしないような些細なミスに過度に反応し、自分を過剰に否定したり、周囲からの評価を必要以上に気にしたりして、ストレスを抱え込みやすい状態になることもあります。
将来への悲観的な考えや自己嫌悪が増え、思考の切り替えが難しくなることも特徴です。「この先うまくいかないのではないか」「自分は役に立たない人間だ」といった否定的な思い込みが強まり、集中力も低下しがちです。
うつ病の初期症状:行動
仕事や家事を先延ばしにする傾向が強まり、期限間際まで手をつけられなくなります。「面倒くさい」「やる気が出ない」という思いが強くなり、小さな作業でも大きな負担に感じられ、結果として後回しにしてしまうことが増えていきます。
また、人との交流も減少し、会うことや連絡を取ることを避けるようになります。外出や電話対応のハードルが上がり、誘いやメッセージへの返信をためらうようになるため、周囲から「元気がない」と心配される場面が増えていきます。
同時に自分を責める思考が行動に直結し、「どうせうまくいかない」と何もしなくなってしまいます。ちょっとした失敗でも「自分はダメな人間だ」と感じ、改善策を考える前に諦めてしまうため、新しいことへの挑戦や日常的な行動さえも億劫になりがちです。
仕事中に見られるうつ症状や行動
職場では、うつの初期症状が以下のような具体的な行動として現れることがあります。
1.集中力の低下やケアレスミスの増加が顕著になり、簡単な事務作業でも再確認を繰り返す
頭がぼんやりとして思考がまとまらず、同じ書類を何度も確認するなど、仕事の生産性が大きく低下します。普段なら簡単にできる作業でも、時間がかかるようになります。
2.突然の電話対応や上司からの指示に強いストレスを感じ、業務の手が止まることが増える
状況の切り替えが難しくなり、電話や急な指示を受けると動悸が激しくなったり、適切な言葉が出てこなくなったりする場面が目立つようになります。
3.同僚との雑談やミーティングを避ける傾向が出て、孤立感を深めやすい
「話しかけられると緊張する」「うまく会話ができないのではないか」という不安が強くなり、結果として周囲との連携も不足しがちになっていきます。
4.業務を先延ばしにしがちで、締め切り直前まで手をつけられずに焦りを募らせる
やる気が出ないまま時間だけが過ぎてしまい、結果的に仕事の質が低下したり、残業が増えたりしてしまいます。
5.自己評価が極端に下がり、「自分にはできない」と決めつけて行動意欲を失う
一度のミスで自信を失い、新しい業務に挑戦する前から諦めてしまうなど、負の循環に陥りやすい状態になります。
仕事でうつ症状を感じたらセルフチェックをしてみよう
「もしかしたらうつかもしれない」と感じたら、見過ごさないことが大切です。いつもの自分と違うという違和感があるときは、以下のチェックリストを参考に、自分の状態を確認してみましょう。
- 毎日の生活に充実感がない
- これまで楽しんでやれていたことが、楽しめなくなった
- 以前は楽にできていたことが、今ではおっくうに感じる
- 自分が役に立つ人間だと思えない
- 寝つきが悪かったり、途中で目が覚めたりする
- 朝早く目が覚めてしまう
- いつも疲れていて、元気が出ない
- 食欲がない
- 気分が沈んで、ゆううつである
- 死について考えることがある
これらの項目のうち、複数の項目が2週間以上継続している場合は、メンタルクリニックや産業医などの専門家に相談しましょう。
また、おかしいなと思ったら「休めないから」と思わず、治療を優先することを意識するのがおすすめです。うつは風邪と同様に、早めの対応で早く回復できることも少なくありません。
うつ病かもしれないと感じたら、仕事中に気を付けたいポイント
うつ病は「心の風邪」とも呼ばれます。風邪と同じように、初期に適切な対応ができれば回復が早い一方で、「これくらいなら」と無理をすると症状が長引いてしまう可能性があります。
症状に気付いたら早めに対処することが、うつからの回復への近道となります。そのためには、仕事中にも気を付けたいポイントがいくつかあります。
無理をせず、自分のペースを守る
残業を控え、業務量を調整し、適切な休憩を取るなど、自身の体調に合わせた働き方を意識することが重要です。無理なペースで働き続けることは、症状を悪化させる原因となりかねません。
とはいえ、うつになるほど多忙な状況であり、自分のペースを守るために休むことが難しい環境であることも少なくありません。
しかし、自分自身を守るために「自分が休んだら迷惑になる」と考えず、風邪などと同じように、不調ならば休んで回復を優先するようにしましょう。
上司や産業医に相談する
自分が感じている症状や仕事の負担について、率直に相談することが大切です。必要に応じて業務内容の変更や時短勤務などの配慮を求めることで、適切な環境調整が可能になります。
生活リズムを整える
十分な睡眠時間の確保と規則正しい食事を心がけましょう。睡眠時間が短くなると、うつ症状だけでなく身体の不調の原因になります。産業医やメンタルクリニックで診断書を取り、睡眠が取れる環境を作ることを意識しましょう。
うつで仕事を休むときに助けになる公的機関
うつで仕事を休む必要が出てきた場合、さまざまな公的機関に相談することができます。以下の機関では、専門的なサポートを受けたり、状況を相談して助けを求めることができます。
機関名 | 連絡先 |
---|---|
精神保健福祉センター | 各都道府県・政令指定都市に設置。具体的な連絡先は各センターによって異なる。 |
地域障害者職業センター | 全国47都道府県に設置。具体的な連絡先は各センターによって異なる。 |
ハローワーク | 0570-077450(ハローワークコールセンター) |
労働基準監督署 | 全国に設置。具体的な連絡先は各署によって異なる。 |
こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556 |
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターは、うつ病を含む精神的な悩みに対応する公的機関です。専門家による無料相談や、うつ病に関する情報提供、自立支援のためのデイケアプログラムなどを行っています。
また、必要に応じて医療機関の紹介も行うため、うつ病に悩む方々が適切な支援を受けられる重要な窓口となっています。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、うつ病などで休職中の方に対して専門的な職業リハビリテーションを提供する公的機関です。
リワーク支援として、職場復帰に向けた通所プログラムを実施し、健康管理や職務能力の回復を支援します。また、職場適応援助者(ジョブコーチ)による個別サポートも行い、円滑な職場復帰と継続的な就労を支援します。
ハローワーク
ハローワークは、うつ病を含む精神障害者の就労支援に特化した窓口を設けています。専門の職員による職業相談や求人紹介、職業訓練の案内などを無料で受けられます。
また、精神障害者雇用トータルサポーターによる障害特性に応じた支援や、職場定着までのフォローアップも行っており、うつ病の方の就職活動を総合的にサポートしています。
労働基準監督署
労働基準監督署は、うつ病などの精神疾患に関する労災認定を行う公的機関です。業務による強いストレスが原因と認められる場合、労災補償を受けることができます。
具体的には、休業補償や療養費用の支給があり、精神的な支援を通じて職場復帰を促進する役割も担っています。これにより、うつ病の方が安心して治療に専念できる環境を整えています。
こころの健康相談統一ダイヤル
こころの健康相談統一ダイヤルは、うつを含む精神的な悩みに対応する全国共通の電話相談サービスです。0570-064-556に電話すると、居住地の公的相談機関につながります。
多くの地域で平日の日中から夜間まで対応しており、専門家が無料で相談に応じます。匿名で利用でき、必要に応じて適切な支援機関を紹介してもらえるため、うつに悩む方の心強い味方となっています。
うつから仕事に復職するときのポイント
うつから職場復帰する際は、段階的なアプローチが重要です。以下のポイントに注意を払いながら、慎重に復職を進めていきましょう。
段階的な復帰
最初は短時間勤務や軽作業から始め、徐々に勤務時間と業務内容を増やしていくことで、心身への負担を軽減し、スムーズな職場復帰を目指します。無理のないペース配分が、安定した復帰につながります。
医療機関との連携
主治医の許可を得てから復職を開始し、定期的な通院や服薬を継続することが大切です。これにより、症状の再燃を防ぎ、安定した就労状態を維持することができます。
職場との密な連携
上司や人事部門と復職後の業務内容や配慮事項について事前に話し合い、必要に応じて産業医面談を受けるなど、サポート体制を整えることが重要です。職場の理解と協力を得ることで、より安心して復職に臨むことができます。
うつで仕事を休んだあと、転職するならエージェントを活用しよう
うつからの回復過程で、現在の職場環境を変えることも、新たな出発への選択肢の一つとなります。その際、うつからの復職に理解のある転職エージェントを活用することで、より適切な職場環境を見つけやすくなります。
専門知識を持つキャリアアドバイザーが、あなたの状況や希望に合わせた求人を紹介し、面接対策から入社後のフォローまで、きめ細かなサポートを提供します。新しい環境での再スタートを考える際は、ぜひ転職エージェントの活用を検討してみてください。
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大学卒業後、日系コンサルティングファームに入社。その後(株)D&Iに転職して以来約10年間、障害者雇用コンサルタント、キャリアアドバイザーを歴任し、 障害・年齢を問わず約3000名の就職支援を担当。